おはなし | ナノ 拍手ログ02/金吾



「金吾は武士となるのか」
「はい」
「では何故ここにいる」


不思議そうに問われたことに、金吾はびっくりして固まった。


「何故って、それは、父上の命で…それに戸部先生から剣を習って、一流の剣豪になるんです!」
「なるほど。では戸部先生から習ったこと以外は、捨てなさい」
「え?」


一層首を傾げる金吾。この先輩は何を言うのだろう。


「合戦場で武士として戦う場合、それは誇りの遣り取りだ。金吾。忍は生きる為にプライドを捨てるがね、武士はプライドの為に死ぬのだよ。そんな誇り高い武士が忍の術なんて使ってはいけない。それでは御家の名誉に傷がつく」
「誇り…」
「金吾、武士となるなら忍術はいずれ捨てろ。お前は忍ではなく、忍を使う者となるのだから」


先輩は終始真顔でそう言って、最後に悪戯っぽく笑った。



「忍術が入用な時は、私を使いなさい。暗殺でも偵察でも用心棒でも、私を使いなさい。お前の捨てた忍術を、私が拾ってあげるから」



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