おはなし | ナノ
いい加減にしろ!1



「私は真実貴方を愛しているのです、左吉殿」
「はぁ…」


縁側に座って寄り添う二人、その姿は仲睦まじい恋人同士のようにも見えるが、ある一点がそれを台無しにしていた。


「きっと貴方に別れを告げられれば、私はおかしくなってしまうでしょう」
「名前先輩…」
「なんですか、左吉殿」
「そう言うのなら、その膝の上の存在をどうにかしてください」


左吉が指差した先、恋人の膝の上には、ご機嫌な頭が乗っかっていた。当然生首ではないので、名前先輩と同じ杜若色の制服を着た体は向こう側に寝そべっている。
そのご機嫌な人物、斉藤タカ丸は四年生に編入した十五歳の元髪結いで、何かとトラブルの目になるは組の素質を持っていた。
そしてその素質は、こんな所でも発揮されてしまうようだ。


「僕は名前先輩とあ、あい、逢瀬をしているのでしょうっ?」
「そうですよ、左吉殿」
「…タカ丸さんがいるように見えるのは、僕の目がおかしいからでしょうか」
「違いますよ、左吉殿」


これこの通り、タカ丸はこちらに。そう言ってタカ丸先輩の耳筋を撫で上げる名前先輩。
気持ち良さそうに眠るタカ丸先輩は、むにゃむにゃと寝息を漏らした。


「おかしいでしょう」
「左吉殿の眼はおかしくなど…」
「おかしいです!」


なんで久々の逢瀬で、第三者が恋人の膝の上を占拠してるんだ!
僕は泣きたくなった。これで名前先輩とタカ丸さんじゃなかったら、浮気だと思って逃げ出したところだ。
僕の言葉を聞き、名前先輩は困ったように眉を下げた。


「左吉殿、これとは昔からこんな風なので、何が左吉殿のお気に召さぬのか…」
「全部です!全部!」


斉藤タカ丸と僕の恋人は、学園に入るよりずっと前、小さな頃から幼馴染だったらしい。名前先輩は家業のため忍術学園に、タカ丸先輩は髪結いの修行にと、離れ離れになった二人であったが、タカ丸先輩が編入したことで再会を果たしたらしい。
奇しくも同じ四年生となったことで四六時中べったり。唯でさえ僕と名前先輩は学年も委員会も違うから一緒にいられる時間は少ないのに、貴重な逢瀬のときまでひっついてくるなんて…!
空気の読める人じゃなかったんですか、タカ丸先輩!


しかもそれだけじゃなく、名前先輩はタカ丸先輩を「タカ丸」とか「これ」とか呼ぶ。それなのに僕は未だ「左吉殿」。この落差はなんだ!僕は貴方のいったいなんなんですか!?



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