おはなし | ナノ 貴方の愛は素直じゃない



「作兵衛は良い尻してんな…用具で動き回るからか?」
「や、やめてくださ…っ!」


涙目の作兵衛ほんと可愛い。ぷるぷるする尻に齧りつきたい。
用具倉庫の傍でばったり出会った可愛い後輩。しまった!と言わんばかりに顔を顰めた作兵衛に悪戯心を起こした俺が涎を垂らさんばかりの様子でじりじりとにじり寄るのに慌てて逃げようとするが、俺は仮にも六年生。三年の反射神経では勝てないに決まっている。
あっけなく捕まった作兵衛は、今現在俺の腕の中でそのきゅっと締まった尻を揉みしだかれていた。


「工具使う姿勢が良いんだろうな。綺麗に筋が…ふんふん」
「ひっ、ちょ、や、何処まで触っ…ひっ!」


真っ赤になってぷるぷるする作兵衛可愛いなぁ和むなぁ。ほんわかセクハラしていたら、冷たく鋭い殺気が突き刺さった。作兵衛が硬直して後方を見ている。
来たな留三郎。毎度毎度用具の子にセクハラしようとすると現れては「教育的指導!」とか叫んで殴りかかってきやがって…言っとくが俺は留三郎みたいにペドじゃない。同学年でも構やしない。好みな身体ならな。
なので今日は日頃の復讐も込めて留三郎の二の腕を思う存分セクハラしようと思って用具倉庫に来たのだ。作兵衛は正直嬉しい誤算でした。ご馳走さまです。
ふふふ、さぁかかって来い留三郎。赤い縄も用意してあ…る……ぞ?


「……何してんだ左門、そんな茂みで」


作兵衛の視線を辿れば、そこには本日の餌食じゃなく茂みから恨みがましい目を向けて来るぶっさいくな顔があった。じとーっとした目は俺だけを睨んでるはずなのに、作兵衛がおろおろと慌てだす。


「さ、左門!違ぇぞこれはいつもの先輩の悪ふざけで…」
「作兵衛…いいんだ。分かってる。先輩はそんな人だ…」
「左門…!」


相変わらず俺を睨んだまま、作兵衛に向けて諦めたような声を出す。なんだ失礼な。大体お前、また頭に蜘蛛の巣付けて…今度は何処を走り抜けてきたんだ。


「例え先輩が僕のそんな所やあんな所を一切触ったことがなくても、そんな場所を作兵衛が触られてたとしても…大丈夫、僕は誤解なんてしない……お幸せにぃぃぃ!!」
「思っきし誤解してんじゃねーかばかやろぉぉぉ!!」


だっと走り出した左門を「待て、誤解だ!っつかそっち行くな学園の外に出る…!」と引き止める作兵衛。必至だな、と言うと、先輩のせいでしょうが!と怒られた。はいはい、分かったって。
作兵衛を降ろしてよっこいせと立ち上がった俺を見上げる不安気な顔に、にっと笑いかける。左門が作兵衛を嫌うなんてありえんから安心しろ。アイツだって本気で誤解してるわけじゃない。ただちょっと悔しかっただけだろ。


「探しに行ってくれんですか…?」
「ああ。あんなちんちくりんでぶっさいくでばっちぃバカでも、一応俺の恋人なんでな」


なんで俺をそんなに慕うんだか心底謎なのだが、それでも与えられる好意以上に、たぶん俺は左門を…おっとこれ以上はあと数年後に出す結論だ。俺は自他共に認める助兵衛。認めてしまえばもう止まらん自信はあるんだ。


「さてと、早いとこぶっさいくを回収して留三郎の二の腕パーティーすっか」
「にっ!?」
「あ、作兵衛言うなよ?言ったら…」


さっきより凄いセクハラするからな?
俺の言葉に青くなった顔をぶんぶん頷かせる作兵衛の頭を撫でて、俺は既に影も形もない猪突猛進迷子を追いかけた。



貴方の愛は素直じゃない



やっぱり左門の頭が一番触り心地がいいな、なんて、本人には言わないけれど。



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左門には酷いけど、一応心底愛してるし信じてる。絶対言わないけど。セクハラもやめないけど。
最後までご覧下さりありがとうございました。



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