おはなし | ナノ 貴方の愛は嘘っぽい2



とりあえずこのぶっさいくを泣きやませなければ。あまり長引くと同級生達が嬉々として見学に来る。障子を隔てた気配に少し手遅れを感じながらも、俺はひっくひっくしゃくりあげる左門の頭に手を置いた。


「あのな、左門。俺は太ももや尻や二の腕やうなじやわき腹が好きだ。大好きだ」
「真顔で変態発言しないでください…」


じとっとした目で睨むな。ああもう!
涙とか鼻水とか涎で重くなった手拭いを放り出して、ぎゅっとちんちくりんな恋人を片手で抱きしめた。途端肩口がしっとりと…うう最悪だ。俺は綺麗好きなんだぞ。


「大体お前は、太ももも尻も二の腕もうなじもわき腹も、全然これっぽっちも魅力のないちんちくりんのぶっさいくだ。しかも汚い」
「汚っ…!?」
「身体的な好みでいえば三年では作兵衛とかのがど真ん中ストライクだったりする」
「やっぱり…!」
「でもな、それでもお前の頭の撫で心地が、他の誰より何より気にいってる」


くりくりのどんぐり頭に、サラサラの髪が心地いい。これは俺の大のお気に入りだった。
だいたいこの俺が貴重な時間を割いて相手してやってるのも、手拭いで鼻水拭いてやるのも、全部お前だからだ。気付け馬鹿。ぶっさいく。
左門はびっくりしすぎたのかようやく涙は止まったが、今度はその楕円の目を真ん丸にして頭を撫でてくる俺をぽかんと見上げていた。
尻よりも何よりも、お前の頭は俺の手にしっくりくるんだ。それで満足しろ。むしろ光栄に思え。


それにな、左門。


「もうちょっと成長したら、嫌って言うほど触るからな。覚悟しとけよ?」


今はちんちくりんでも、成長期を迎えればそれなりに肉も筋も良い具合に付くだろう。
そしたらあんな所もこんな所も触り放題、公認セクハラし放題。そのためなら俺はどんなにばっちくとも、光源氏計画を立派に完遂してみせよう。
いや、勘違いするな。嫌がられないセクハラだけが望みじゃないんだ。少ーし、そう、ほんのちょびっとだけ…コイツにセクハラしたらセクハラで済まない気がするのだ。魅力なんて全然ないのに、おかしな話だ。
うん、でもさすがに下級生にご無体はちょっと…という訳で未だ健全なお付き合いです。欲求は全て他で済ませてます。だから伊作、障子越しに構えたクナイは仕舞ってくれ。文次郎もだ。なんだお前、委員会ではツンなのに本人の見てないとこでデレるな。


「せ、先輩が触りたくなるような体つきになるよう、頑張ります!」


障子越しの攻防を知らない年下の恋人は、俺の発言に真っ赤になって嬉しそうだった。そういう無防備な爆弾発言をするうちはまだまだ尻なんて触れん。何よりお前の先輩が怖い。
でもすっかり涙の引いたぶっさいくな顔を見たら、それもどうでもよくなって。


「ああ、精々頑張って、良い尻になれ」



貴方の愛は嘘っぽい



とりあえず手拭いと上衣、もう使えねぇなぁ。



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落乱セクハラゆめ企画「SSS!」さまに参加させて頂きました。
テーマがセクハラ。これは美味しい!と考えに考えたところ…清純派な私には向いてなかったのか七個没に。結局セクハラ?という出来の最低外道夢主になってしまいました。もっとキャラを喘がせるような話を書きたかったです無念。

管理人のカア子様、参加させて頂きありがとうございます。
そして読んで頂いた方々、その懐の広さに全私が泣きました。

おまけ


2010.06.30
うそつき/おろく



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