おはなし | ナノ
人形芝居14



傀儡子にいた頃、闇夜は怖い物ではなかった。
天幕とも呼べないような、木に布を引っかけただけの空間で同じ年頃の子ども達と小突きあって笑いながら眠りについた日々。
暗闇でわざとおどろおどろしい声を出して、怪談を話してくれる男達。寒い夜に寄り添って眠った母の温もり。
何も怖がることなどなかった。それどころか穏やかな空間は、私達の常に高ぶった祭気質を諌めて、安堵感さえもたらしてくれた。



あの悲鳴が響き渡った夜から、闇は姿を変えてしまったけれど。



幾夜も続く悪夢。
魘されて飛び起きてもそこは天幕ではなく、温もりもない四角い檻。
格子窓から入る月明かりは僅かで頼りない。ちくりちくりと闇が肌を刺す。
忍びよる黒に耐え抜いて五年が経った頃、けれど再び、闇は姿を変えた。



「母さま、おやすみなさーい」
「はい、伏もおやすみ。良い夢を見ましょうね」




可愛い義息を抱きしめて眠る宵闇は、いつかと同じように私をとろりと包んでくれた。



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