おはなし | ナノ 報われない正直者2



左近くんは照れ屋なので、言葉尻に茨の棘が溢れている。
というかい組はほぼ全員ツンツンだ。ろ組はともかくは組に対して容赦なく暴言を吐いてくる。
それでも友好を築ける私と四郎兵衛はマゾなんじゃないかと噂が立ったこともあったが、なぁに、気に食わないところもあるが、い組の本質を知ってしまえばそう目くじら立てることもない。ツンデレって可愛いじゃないか。
そう言ったからか、合同授業などでは優先的にい組と組まされることになってしまった。学力的な意味では付いていけないが、課外授業なら得意分野だ。
特に池田や能勢と組むことが多いのは不本意だが。左近くんは何処だ。左近くんを出せ。


「はぁ…またお前らか」
「それはこっちの台詞だ!なんでは組の馬鹿と組まなきゃなんないんだよっ」


きゃんきゃん吠える池田は正真正銘のツンデレだ。しかし身長的な問題で上目遣いにもならないし、デコも出てないし、何より左近くんじゃないからそう可愛くない。
私は溜息を吐いて文句を流した。一々聞いてたら日が暮れる。


「そろそろ順番だから行くね」
「ん、四郎兵衛も頑張れよー。面倒な事があったら全部能勢にやらせろ。い組だから煽てりゃ簡単にやってくれるぞ」
「お前の俺達に対する認識がよく分かったよ馬鹿!」
「馬鹿って言うな!傷つくんだぞ!」
「体力馬鹿!変な皮膚馬鹿!」
「水泳馬鹿!あと皮膚はどうにもならん身体的特徴だ!馬鹿にするな馬鹿!」
「ごめん馬鹿!」
「許す馬鹿!」


仲がいいね、なんてほわほわ笑う四郎兵衛は早々に能勢に引き取ってもらった。池田と仲が良い?冗談じゃない!どうせなら左近くんとラブラブになりたい!
毎度恒例、左近くんと組んだ奴にギンッと嫉妬の視線を浴びせ、私は池田を伴い駆けだした。


「いつも思うんだけど、その視線やめてやれよ…」
「羨ましすぎてつい…ま、闇討ちするよりマシだろう。さぁ行くぞ池田!」


狙うは利き手骨折ぐらいですかね。






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