おはなし | ナノ 報われない正直者1



「おはよう左近くん、大好き!」


朝の挨拶を放った瞬間、キッと返される冷たい眼差し。
私の大好きな川西左近くんは、ちょっぴりツンデレな、とびきり可愛い子だ。


入学して一目惚れして、知りあって惚れ直して、告白して怒られた。
怒った左近くんもプリティだと感動していたら、からかっているのかと初めての拳を貰ってしまった。
それ以来私に容赦のない左近くんだが、これは…もしやどつき愛というものではないだろうか。
私から左近くんを殴ることなど例え天地が裂けてもありえないから一方的に殴られるのみだが、それはそれで。


むふふふふと笑っていると、親友の四郎兵衛がぽかんとした顔で見上げてきた。


「何か良いことでもあった?」


良いことだと?そりゃ、今日は朝から左近くんに会えたし、挨拶出来たし、告白も出来た。お返しの視線まで貰ってしまった。
こりゃあ今日も一日頑張れそうだ。


「四郎兵衛、お前も恋をすれば分かるさ…この胸の高鳴りが」
「三郎次が分かったら危ないって言ってたよ」
「アイツの言葉は三歩歩いたら忘れろ。水泳馬鹿になるぞ」


また私の親友に変な事を吹きこんで。アイツはい組のなかでもとびきり気に食わない。極端に言うと左近くん以外のい組全員気に食わないのだけど。左近くんとクラスメイトだと…羨ましすぎる。
私は自分が丈夫が取り柄な馬鹿だという事実に涙した。もう少し頭が良ければ、ドキドキスクールライフだったのに。






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