おはなし | ナノ
人形芝居7
ろ組になったのだ、と話す可愛い我が子は、白い顔に縦線を付けて帰ってきた。
何かあったの、具合が悪いのと心配したが、どうやら担任の影響らしい。
クラス全員、担任の斜堂先生とやらの影響で縦線付けた状態らしく…大丈夫なのだろうか、忍術学園。
「抗議文とか送ろうかしら…」
「先生、優しいよ。綺麗好きで、日陰が大好きなの」
「あら、伏も日陰好きだものね」
「うん」
この子の場合、白い肌があまり陽に強くないせいもあるが、長年薄暗い遊里で過ごしたことが影響しているのだろう。
健康を気にして散歩や日向ぼっこをしていたが、大抵の人が自宅と似ている環境が落ち着くと言うように、伏木蔵も日陰の方が好きなようだ。
「皆で日陰ぼっこしたりして遊んでるんだ」
「日陰ぼっこ?」
「日陰で隠れん坊するの。鬼はいないけど」
「み、皆はそれで楽しいって…?」
「うん。休み時間はいつもそんな感じ」
一年ろ組は…大丈夫なのだろうか、色々な意味で。…いや、可愛い伏がこんなに楽しそうなんだ。きっと少々変わってるだけで、素直な良い子達に違いない。
私は内心頭を抱えながら、膝の上に乗せた伏木蔵を促した。
「委員会っていうのがいくつもあってね、色んなお仕事を生徒がするんだ」
「へぇ。伏はどんなお仕事をしてるの?」
「僕は保健委員会で、手当てをしたりトイペを運んだり、落とし穴に落ちたりしてる」
「落とし、穴?」
「保健委員会は別名『不運委員会』って言って、とってもスリルー」
「不運委員会…」
不運委員長や先輩方の話をする伏木蔵は楽しそうで、無理をしているようには見えない。
むしろ入学前よりも逞しくなっているようで、私は心配することを止めた。
少し不安だけど、この子は強い子だもの。良い友達も出来たようだし、きっと大丈夫。
……たぶん。
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