おはなし | ナノ 人形芝居2



私は傀儡子(くぐつ)という狩りと芸を持ってして各地を放浪する集まりの生まれだった。


母は歌と舞を得意とする一族きっての美女で、床は常に繁盛。私はその内の誰かとの子であり、ぽんと生まれてしまったらしい。母はよく大口を開けて笑いながら私に語った。
幼いうちは他の子ども達にまざり大人の男の狩りを手伝い、女達の占いや舞の準備を手伝った。手が剣を掴めるようになると、私は母の歌を背後に剣舞をして稼いだ。
力の強い子は狩りへ、私の様な線の細い子は芸事を磨く。それは当り前のことであり、そしていつかは狩りや合戦に参加して生きていくのだろうと思っていた。



私達が野盗に襲われるまでは。



ある金貸しが母に惚れていたらしい。自分の側室に、と望んだ言葉はすげなく突っ撥ねられた。傀儡子は縛られることを良しとしない。自由奔放であるために、傀儡子は放浪するのだ。
怒った金貸しは自分の配下を野盗に扮させ(いや、もしかしたら本当の野盗だったのかもしれない)傀儡子の野営地を襲わせたのだ。


まったく酷い有様だった。
かろうじて生き残った数人は誰もが子どもで、とても無事だとは言い難い姿だったのだ。
傀儡子は私達だけではなく、各地に点在する。だが連絡をつけようにも無理だった。たとえ怪我を負っていない者がいたとしても、男達は小銭となる私達を逃がさなかっただろう。
娘は遊里に、少年は下働きに売られ、私はどういう訳か少女として遊女屋に売られた。あとで主は憤慨して私を罵ったが。確認もしなかったのはそちらだろう。


そうして私は男として遊里に来てしまった。
本来なら早いうちに陰間茶屋に落とされただろうが、幸いなことに私には母に似た顔と舞があった。
芸事を披露するうちは置いてやる。
決して大きくは無い遊女屋の主は、見世特有の出し物を目玉としたかったらしい。


そうして十年以上の日々が経ち、小さな見世は遊里の花形となり、幾人もの女が増えて減った。
私はまだ、舞っている。
可愛い義息のために、舞っている。



prev/top/next
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -