おはなし | ナノ 人形芝居1



伏木蔵には義理の父がいる。
しかしその男は今までただの一度も、父と呼ばれたことはなかった。





「でね、こないだ学園で、学園祭があったんだけど」
「…ねぇ伏」
「どうしたの母さま?母さまも来たかった?」
「いや、それは招待状が来てたの断ったから…そうじゃなくて、伏」


にこにこ笑う義息は相変わらず青褪めていたが十分可愛らしい。
が、私は心を鬼にしてでもこの間違いを正さねば。
膝にちょこんと頭を乗せた可愛い伏木蔵に、わざと怖い顔で凄んで見せた。


「私は男だから、『母』じゃなくて『父』と呼びなさい」
「でも母さまは僕の母さまだもん」
「伏…何度言ったら分かるの。私は男です」
「でも母さまは綺麗で…着物も似合ってるのに」
「うっ」


私の着物は姐さん方のお下がりを譲り受けている。つまり絢爛豪華な金糸銀糸の刺繍が輝く女物。
男の私が何故このような装いかというと、私の生い立ちから話さねばならない。



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