おはなし | ナノ
ところで4



「とりあえず人のプライベートを詮索する奴は臓腑撒き散らせばいいのにと思うんだけどどうだろう」
「どうしたんだ急に」


孫兵が自室の戸を開けたら、同室の友人が宙を見上げて佇んでいた。
一瞬そのまま回れ右をして立ち去ろうかと迷うが、ぐっと思い直して足を踏み入れる。午後からの委員会で、奥にある道具がどうしても必要だったからだ。
ぼうっとした様子の名前の隣を自然に通り過ぎようとした瞬間、驚くほどの速さで前に回り込まれる。


しまった、捕まった…!


咄嗟に舌打ちした孫兵も孫兵だが、そのまま持ち前の怪力でそこに座るよう強制してくる名前も名前だった。
渋々座り込んだ孫兵に向かって、もう我慢ならんと言うように拳を固く握り冒頭の台詞を繰り出す名前。勿論反対の手は孫兵を掴んだままなのだが。逃がすつもりは無いらしい。


「いや、私基本的に自分のこと聞かれるの嫌いだろう?聞くのは別にいいんだ話したいだけ話すといいよ存分に聞こうじゃないか。だけど話したからって教えろはないと思うんだがそこんとこどうなんだろう私が変なだけかようしいい度胸だかかってこいよ相手になるぜ私とお前の主張を賭けたガチバトルだ」
「落ち付け、僕はお前の情報なんかに興味は無い」
「だよなー。私のこと知って奴になんの得があるというのだろう私基本的に記憶力が無いから奴から聞いた内容も三日後には覚えてないんだ本当に」
「ああ、お前の鳥頭さは嫌と言うほど知っている」
「あああもう鬱陶しすぎてテンション下がる」


がっくりと肩を落とす同室者の姿に、最近何かと名前に会いに来る同い年のくのたまの姿を思い出す。
他の皆は何か察していたようでにやにやと名前を小突いたり無理矢理押し出したりわざとくのたまとの共同当番などを名前に変わって貰ったりしていたので奇妙に思っていたのだが、なるほど。


鈍い孫兵でも、なんとなく気付いた。
そして、何故かイラッとした。








「で、今度はどうしたんだ」


私は貝になりたい。海の底へ沈みたい。


「…今日、あのくのたまに呼び出されてたそうだけど、何かあった?」


……いいえ、いいえ。何も。何もしてあげることも、望まれた言葉を返すことも出来ませんでした。他人様を悲しませて、私はどうしてこういう人間なのか。誰を傷つけることもない貝になりたい。


「貝に指を挟まれたら痛いよ」


…口を開けない貝になりたい。


「どうせなら虫になりなよ。毒を持ってるやつがいい」


孫兵の趣味じゃないか、それ


「うん。僕、毒虫が好きだから」


………なら、虫でもいいかなぁ。



prev/top/next
「#お仕置き」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -