おはなし | ナノ ぬくもり天邪鬼



夜、ふっと目が覚めるでしょう。
暗い部屋に一人きり、外に出れば星が明るいけど、とても寒いの。


「そういう時に、温もりがあればいいなぁって思って」
「ほう…つまりそんな事の為に、寝ている私を叩き起こしてこんな寒空の下に引き摺り出したってわけか名前は」
「同室の不破くんに遠慮して、なるべく静かに引き摺ったでしょう?」
「それでも雷蔵起きてたし苦笑してたし、しかも私がくのたま長屋にいることがばれたら命が危ないし!」


例えそれが不可抗力でも!そう小声で騒ぐ三郎の膝にぎゅっと顔を埋める。
ちなみに寒がりの三郎は半纏や首巻きといった完全防寒。でもちょっとやりすぎじゃないかしら。もこもこしてまるで雪だるまみたいな三郎に、なんだか笑いが込み上げてきちゃう。


「…あっ、おい。何を笑っているんだ」
「だって三郎、そんなに文句を言うくせに、一回も抵抗しないじゃない」


私の部屋の前、寒い廊下でわざわざ正座して膝に私の頭を乗せてくれてる。
私は寒さに強いから三郎が使えばいいって言った毛布だって、私にかけてくれてる。
素直じゃないけど、優しい、天の邪鬼。


「それはだなぁ……はぁ、寒い…」
「そう?私はあったかいわ」


星が明るくて、頭を撫でてくれる手がくすぐったくて、憮然とした顔が愛しくて。


「三郎、大好きよ」
「…寒い」
「じゃあもっとくっついてね」



私、もう寒くないよ。



prev/top/next
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -