おはなし | ナノ 聖職者の死した日に黙祷を捧げよ



最上級生の教室から物凄い破壊音と絶叫が聞こえてくる。
【モメン】はその音と台車の立てる轟音を勝利のファンファーレのように感じながら爆走していた。
目指すは校舎屋上。この周辺での最後のチョコであろうこれらを、もう少しでやって来る予定のヘリに乗せて遠くまで運んでしまえばミッションクリア。つまり任務完了である。ちなみにヘリ云々は事前に裏取引で学園長と既に話をつけている。【モメン】はこの日のために、慎重に行動を進めたきたのだ。


「お前達、止まりなさい」


だからこの様に妨害しようとする者が現れても、想定の範囲内である。


「しかしまさか、貴方が出てくるとは思いませんでした…土井先生」
「私も名前のような優等生がこんな騒動を起こすとは思わなかったさ。さぁお前達、そのチョコは店に返して教室で授業の用意をしなさい」
「土井先生…残念です。ええ。本当に」
「名前…?」


紫色の台車を引いていた、一見優等生然とした少年が進み出る。
戸惑う土井を銀フレームの眼鏡越しに睨むように見つめながら、背後の二人に告げた。


「先輩方、ここは僕に任せて進んで下さい」
「名前、幾らお前でも教師が相手では…っ」
「大丈夫。こうなることは薄々計算していましたから」
「…ならば任せた」
「了解。成功を祈ります」


途端爆走する二人の生徒を、土井が振り返り様に止めようと動くが、その体が次の瞬間硬直した。
何故なら背後からぎゅっと抱きついてくる温もりが、これ以上は進ませないとばかりに強く強く拘束してくるから…。


「先生、僕、先生が今日は忙しいって言って僕の約束を断ったでしょう」
「あ、ああ。すまなかった」
「それはいいんです。先生が忙しいって、僕知ってますから。でも、先生…きり丸のバイトを手伝うんでしょう?きり丸からそれを聞いて、凄くショックだったんです。だから、だから僕…」
「名前……っ」


「だから僕、バレンタイン当日に土井先生を捕まえて×××して××したら××××に出来てきり丸とはいられなくなるんじゃないかって思って!万が一誰かに見られたら教育委員会と僕を賭けて争ってくださいね、土井先生!」



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