おはなし | ナノ
種族名『イケテルメンズ』を隔離せよ 抵抗するようなら乱暴にしても構わない
一人を残して廊下を爆走する【モメン】。
しかしとある教室を間近にして、一台の台車が急ブレーキをかけた。
ギャギャギャギャッと廊下に黒いタイヤ痕を残しながら止まった一人の男は、教室を睨みつけ、続いて止まった仲間にぽつりと低い声で告げた。
「ここは俺一人で十分だ。お前等は各自、任務遂行に全力を注げ」
「幾らなんでも、貴方一人では…!」
「相手は二人、いや、下手したら倍に増えるんだぞ!?」
「大丈夫だ…何故なら俺達【モメン】は、この日に限り無限の力を持っているからな…」
「でもっ」
「…っおい二人共、そいつの好きにさせておけ!日頃からの鬱憤は、そいつが一番溜まっているだろうからな…」
リーダー格の決定に、戸惑っていた二人も渋々と納得した。
再び台車を動かし仲間達が隣を通り過ぎる瞬間、残った男は楽しげに笑った。
「ありがとうよ、俺に任せてくれて」
「…死ぬなよ」
「ああ」
ガラッ。
いつものように軽い音を立てて開いた教室の扉に、注目したのは誰が先だっただろうか。
食満の持っていた雑誌を横から眺めていた善法寺も音に釣られて顔を上げると、そこにいたのはいつも食満と三人でつるんでいる友人名前。しかし、その空気が嫌に黒い。
「あれ?名前、どうし…」
「駄目だ伊作!あれを見ろっ」
「え?」
焦った食満の指差す方を見れば、名前の後ろにある深緑の台車。そしてその上に山と積み上がる、不穏な札で封印された箱。
善法寺は瞬時に事態を悟った。思えば去年も一昨年も、この日の名前は危険なのだった。それを何故忘れていられたのか?
それは、この日以外名前はまったくの温厚で優しい男だからだ。
そして、そんな名前のことが善法寺は…。
「今年の最上級生は俺が一人で担当する。抵抗する奴には死を。大人しくする奴には少しの苦しみを」
「名前…そんな、戻ってよ、いつもの名前に!」
「伊作、手遅れだ!こうなった名前はもういつものあいつじゃない!」
「名前!」
「さぁ、最初にかかってくる奴は…どいつだ?」
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