おはなし | ナノ
Try fight!3
逃げる俺の目に飛び込んできたのは、カモ…じゃなく、箒で庭を掃く今福くんの後ろ姿。
これは行くしかないだろう。
「いっまふっくく〜ん!」
「え?わっ、名字せんぱ、」
バシッ
伸ばされた俺の手は、いきなり現れた不破くんの手に払い落された。地味に痛いです。
そのまま隠すように背後に今福くんを隠してしまった。
「不破くん、痛い」
「自業自得です」
酷い…この子こんなにキツかったかな?あまり関わりないから知らないんだよな。
「今福くん、こっちにおいで。お兄さんが飴玉をあげよう」
「え…」
「彦四郎、勘右衛門と普段から口を酸っぱくして言っているだろう?その手の言葉をかけてくる相手にはどうするんだった?」
「えっと、『×××を蹴りあげてとっとと逃げろ』と仰ってました」
「よし。実行しようか」
「待て待て待て!」
良い笑顔でちっちゃい子に何させようとしてんのこの子!?え、これ本当に不破くん?長次からは温厚でいい子って聞いてたんだけど!?
でもこの顔は確か不破くんで…あれ、そういえば他の話も聞いたな。
「あ、もしかして:鉢屋くん?」
「イマココとか言いたくなる言葉をどうも。確かにお察しの通り鉢屋三郎です以後お見知りおきをしないでくださいこの変態」
「分かり合う間もなくこの拒絶。どういうことなのガラスの青少年なの」
「ガラスを断りなく泥まみれの手で触ろうとする輩には容赦するな、が我が委員会伝統の教えなんで。ほら彦四郎、目を白黒させてないで行くぞ。掃除は終わりだ」
「え、でもまだ向こうが…」
「ケチがついた。これ以上変態にロックオンされる前に美味しいお茶を飲みに行こう」
「えぇ…」
「ほらほら戸惑ってるじゃないか大人しく俺と飴パーティーしようぜ」
「金的喰らわされたくなけりゃとっとと消えてください」
「なんという風当たりの強さ」
五年間も同じ学園でいてそう話した記憶がないのも、もしかして避けられてた?なーんてうがった見方をしてしまいそうな鉢屋くんの冷たさに俺は溢れるエア涙を布で拭った。
「嘘泣きはいいで………あ!」
「え?鉢屋先輩どうか……あれ!?」
「十四と十五個目ゲットだぜ!ごちでしたー」
気付いて袴を抑える二人をその場に残して、とっとと退散した。
勿論その両手には白く輝く褌。
苦無やら手離剣やらが無数に飛んできたけど、全部回避出来てなおかつ褌も無事だったのは日頃の鍛錬の賜物だと思う。
皆、毎日の特訓は無駄じゃないぞ!頑張ろうな!俺も頑張る!
主に褌狩りを!
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