おはなし | ナノ
Try fight!2



「失礼しまーす。三反田くん、お腹痛いんで癒してー」
「さっさと出てってもらおうか」
「あれ、伊作?三反田くんじゃないの当番」


医務室に入ると伊作が笑顔で退室を促してきた。酷い。
傷ついた心を癒して貰おうと三反田くんの姿を探すが、どこにも見当たらない。影が薄くなりすぎて遂に消えてしまったのだろうか。


「数馬ならお使いに行ってもらってるよ。分かったらさっさと出てって」
「仮にも病人なのに」


しっし、とまるで犬を追い払うように手を振られて、俺はしょげた。誰だ伊作が優しいって言った奴。こいつ同学年には結構容赦ないぞ。
あーあ、川西くんか猪名寺くんがいたら良かったのに。鶴町くんは…なんか怖いからいいや。


「そんな腰飾りつけてる病人に優しさはいらないよ」


俺の腰でひらひら揺れてる本日の戦利品に指を向け、呆れたように溜息を吐く。
リボン飾りは嫌いかい?可愛いのに。


「そんなことばっかりして…仙ちゃん怒ってるだろうに」
「般若でした」
「ほら。さっさと皆に褌返して謝ってきな」
「というか伊作、さっきから何作ってるの?ノーふんで」
「これは胃痛に効く薬で……え?」
「十三個目ゲットだぜ」


ひらり、増えた飾りを翻して、俺は医務室から飛び出た。
罵り声が追いかけてきたが、本人は暫く動けないだろう。後輩に見つかって変な噂立てられてしまえ。


ついでにかっぱらってきた薬を飲む。胃痛も腹痛も同じだろう。



…たぶん。



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