おはなし | ナノ
Try fight!
「お腹痛い…浦風くん、癒して…」
「え、えー…」
どうしよう、なんて言葉が言わずとも伝わってくる。
哀れな浦風くんは作法委員長から俺を見張るよう言いつかっていて、逃げることもできない。かといって面と向かって発言もできず、目を泳がせるのみだ。
「ねー浦風くーん」
「ど、どうかしました?名字先輩」
「お腹痛い」
「…医務室に行きますか?」
確か今なら数馬がいたはずですし、僕が一緒なら移動しても怒られないかも…。
浦風くんは真剣に悩んでくれている。俺は白い布をリボン結びにしながら、でもねーと返す。
「浦風くんが俺の膝に乗って腹を撫ぜてくれれば治りそうな気がするんだ」
「え?」
「さぁさぁ、可哀想な俺の腹を癒しておくれ」
「は、はぁ」
両手を広げて呼べば、戸惑いながらも近づいてくる浦風くん。可愛いけれどとても無防備だ。
俺はによによその瞬間を待った。が。
スパンッ
小気味良い音と共に物凄い衝撃が頭を揺らした。
慌てて振り向けば、そこには般若の顔をした仙蔵がいた。
「名前…お前という奴は…!」
「ありゃ、おかえり仙蔵」
「た、立花先輩…?」
戸惑う浦風くんは膝立ちの状態で怒れる般若を見上げた。あ、ぷつって音がしたな。
「お前、藤内の褌を抜いたあげくノーふん状態で膝の上に乗せようとしたのか!この変態!いい加減懲りろ!」
「え?…あ、えぇぇ!?」
言われて気付いたのか、股間を押さえて「ない!?」と真っ赤になった浦風くん。無防備で可愛い。俺はリボン結びになった浦風くんの褌を腰に下げて、勢いよく飛び上がった。
「ふはは、十二個目ゲットだぜ!」
「か、返してください名字先輩ぃぃぃ!!」
「恨むんなら無防備な自分を恨みな」
「名字先輩を恨むに決まってるじゃないですか!」
屋根の上に着地すれば、下には追いかけようにもノーふんで動けない浦風くんの姿。色っぺえ。
ほほうと観察していると背後からとんでもない殺気を感じ慌てて転がる。
ドゴッ
重い音と共に砕ける屋根。あの細身のいったい何処からそんな力が湧いて出るのだろう。
俺はびっくりしながらも逃げ出した。
勿論、ひらひらと戦利品をなびかせて!
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