おはなし | ナノ
キケンなことは好きですか
「なぁ元山、お前【機研】だよな」
「え?ああ、そうだけど」
教授が突然出張に行ってぽっかり出来た空き時間。
連絡が遅いと喚く生徒達を見ながら、部室で時間潰そうかなと考えていたまさにその瞬間、元山の肩を叩く者がいた。
「良かった。何回か上野さんといたとこ見かけてたんだけど、違ったらどうしようかとかなり怖かったんだ」
なんてまったく怖くなさそうな無表情で胸に手を当てる名字名前。
必修以外にも幾つかの授業が被っていて、いつも判を押したように無表情だから、話したことはなくとも印象に残っていた。
「で、ええと、何か用」
「そうそう。これをね、上野…ユナ・ボマーに渡してほしいんだ。『例のモノが手に入りました』って言えば分かると思うから」
黒いショルダーバックから出てきたのは、国語辞書くらいのこれまた黒い箱だった。思わず受け取ったが中味は何なのか、意外にずしりとした重量を感じる。
これを、上野先輩に渡せ?わざわざ有名な二つ名に言い換えたことと言い、嫌な予感がする。それでなくともあの先輩関連は碌なことが無いのだ。
「えっと、例のって…」
「ヒミツ」
恐る恐る聞けば、無表情な口元が初めて弧を描いた。
意外と愛嬌のある笑顔だったが、出来れば別の状況で知りたかったものである。
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