おはなし | ナノ
十数えたら2
「きゅ━━ヽ(゚∀゚)ノ━( ゚∀)ノ━( ゚)ノ━ヽ( )ノ━ヽ(゚ )━ヽ(∀゚ )ノ━ヽ(゚∀゚)ノ━━うっ」
くるくる回転しながら数を数える食満先輩と同じ組らしい先輩。顔は無表情なのに声だけはうきうきと弾むようだ。
食満先輩が投げつけていった補修用の板と木槌を両手に持っているから危なっかしくてはらはらする。いや、このはらはらはもし万一食満先輩が捕まっちまったらどうしようっつーのもあるんだけど。
俺はくるくるする、あまり話したことがないどころか名前も知らない先輩へどきどきしながら近寄った。
「あの、せんぱ」
「十」
「は?」
「だからじゅうだよじゅう。じゅう、とお、テン、シー、ディス、サプール」
「で?さぷ?え、あ、数え終わったんスね」
「そうだ。食満くんを追いかけてパーティーの始まりですね分かります」
食人パーティーですね分かりたくねぇです!!!!
「あの、本気で食満先輩を食ったりなんか…しねぇですよ、ね?」
「十割本気で食うが。なんだお前も食べたいのか。確か三年ろ組の次崎作之門くんだったか、諦めろ。食満くんは食いでがありそうに見えるが割と細身だから食える部分はそう多くないと思う。お前はお前の同級生を狙え」
「いや、先輩も友達も食いたくねぇっす!っつかその名前原型少しもとどめてねぇし作しか合ってねぇし!」
「ではな三反田くん!万が一余ったらお裾分けするかもしれん!」
「余って欲しいけど余って欲しくないこの複雑な気持ち!そして完全に名前間違えた!まさかの数馬!」
俺があまりの混乱に崩れ落ち地面を強く叩いた瞬間、先輩の姿は消えていた。ついでに俺が持ってた小ぶりの鉈も消えていた。
地面に転がる板と木槌を見つめながら俺は、この食満先輩の遺品をどう善法寺先輩に渡そうか、後輩達にはなんて伝えたらいいのか、赤味噌より塩漬けなのかなとかぐるぐる考えていた。
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