きっと伝えるから、もう少しだけ待っていて ※現パロ 「く、くくく!」 「あ、また来たのだ」 「…っ」 廊下を歩いていると、後ろから奇妙な笑い声がかかる。 反射的に振り返れば、眉間にこれでもかと皺を寄せた生徒が肩を怒らせて立っていて、その顔を見た久々知が呆れた声を出せばより一層怒った様子で踵を返して駆け去って行った。 これでもう13回目になるのだが、未だに彼が何をしたいのかさっぱり分からない久々知は「いじめ?」と首を傾げたのだった。 「あああもう!俺の!チキン!いくじなし!」 「13回目の失敗オメデトー」 「うわーん喜八郎が酷いぃぃっ」 教室に入るなり崩れ落ちた俺に、事情が駄々漏れのクラス中から囃し立てたり同情の声が飛ぶ。 中でも友人達の容赦ない言葉が俺を貫いて行く。 「先輩もそろそろキレるんじゃないか」 「滝まで酷い!」 「お前が女々しいのが悪い」 「めっ…!?す、好きな人を前にして、しかも告白しようとして緊張するのは当たり前なの!」 「それで嫌われてたら世話ないよねー」 「喜八郎くん?冗談でも言っていいことと悪いことがあるんだよ?」 床に座る俺を見下ろす形で机に座った喜八郎が、ポッキーを食べながら面白そうに言うのを聞いて俺の頬がひくついた。 喜八郎って冗談キツイよな、と椅子に座る滝に引き攣った笑みを見せれば、ポッキーを食べながら目をそらされた。イチゴ味の細い棒が、真ん中でポキリと折れる。 …え? 「…そんなまさか……え、俺もしかして告白する前から嫌われてるの?」 「好かれてる、とは、言えないだろう…あの態度じゃ…」 「毎回鬼の様な形相でメンチ切ってくる奴とか、印象は最悪だよね」 オブラートに包んでくれようとする滝夜叉丸の気遣いを、喜八郎が破いて棄てた。 慌てて喜八郎の口に残りのポッキーを全部突っ込む滝夜叉丸を見ながら、俺は呆然と…呆然とその場で砂になっていた。 「そ、それでも伝えるだけ伝えろ!このままじゃ先輩に失礼して終わりだ!」 「伝えた方が失礼じゃない…?」 「女々しく泣くな!男ならしっかり自分の決めたことを成し遂げろ!」 「滝って意外と暑苦しい…委員会の影響?」 「この美しい私に向かって暑苦しいとはなんだ喜八郎ー!」 ぎゃいぎゃいと騒ぐ二人を見てると、砂になった俺の心がしっかり戻って来た。 そうだよな、伝えるって、決めたんだから。 「ありがとう、滝!俺頑張るよ!」 「ん?あ、ああ、よし!その意気だ!」 「あれ、僕は?」 「「喜八郎は爆発しろ」」 「おやまあ酷い」 告白しようとするたび緊張で何も話せない俺だけど、きっと伝えるから。 だからもう少しだけ待っていて、久々知先輩。 - - - - ついログを加筆修正。強面女々しい男主。 四年い組では男主の恋は周知の事実。 きっと伝えるから、もう少しだけ待っていて..title by 確かに恋だった 2011/09/08 00:54 |