うそつき | ナノ


Un gâteau sucré(flat)



※flat新刊見て突発的に。担任覚えてないから捏造したけど既出だったらメンゴー
※なんかただのBL
※教師×生徒
※「Un gâteau sucré」仏語でたぶん「甘いお菓子」



同じクラスの気の抜ける三人組がクリスマスについて話してたのがいけなかったんだと思う。
試験前だってのに楽しそうにでっかいケーキの計画なんかでわいわい盛り上がってるからついつい耳から入る情報に脳が染まって手元の問題集が何書いてるかワケ分かんない象形文字に見えてきてしまったわけで。

「つまり?」
「つまり俺は悪くないと思うのです」
「馬鹿か」
「いたっ」

先生にぽかっと頭を叩かれた。酷い。体罰だ。教育委員会に訴えてやる。
涙目の俺を見て先生は言いたい事を悟ったのか、「教師生命を賭けてでも勝訴してやるよ」とかっこよく笑った。おっさんのくせに。

「平介がね、段ケーキ作るんですって」
「さっき言ってたな。あいつは菓子作り以外やる気にならんものか」
「いいなー」
「お前料理の才能0だろうが」

先生は恨みがましくじとりと睨んでくる。アンタの部屋の鍋を焦がしたのは妖精の仕業なので俺を睨まれても困る。テレビの特集見てたら俺にも本格ビーフストロなんとかが作れる気がしたのですよ。

「佐藤に頼んで俺も混ぜて貰おうかしら」
「待てお前。クリスマスは先約があるだろうが」
「そうだったっけ」
「ええ、ええ。一番大事な用事ですよ」
「えぇぇ…なんでしたっけ…?」

首を傾げれば先生の額に青筋が通った。あらら、キレるのは10代の特権というのに30を間近に控えてこのアリサマとは。もう少し落ち着きを持った方がいいと思うけど、このたまーに発揮される独占欲が心地良いのでもうこのままでもいいかな。

「恋人の誕生日に他の男と過ごそうとかいい度胸じゃねぇか」
「ああ、そういやいたね。クリスマスに誕生日とか似合わないおっさんが」
「誕生日に似合うも似合わねぇもあるか。ともかく他に行こうとか思うなよ。繋いでそのまま冬休み中飼うぞ」
「今なら余裕で教育委員会が勝つよね」

このおっさんの不穏な目の色を見せてやりたいよ。かっこいいから絶対誰にも見せてやんないけど。

「それが嫌なら大人しくクリスマスは明けとけ」
「はぁい」
「ちなみに試験で赤点取ったお前がクリスマスを過ごすには再試で60点以上取ることが必須だぞ」
「うわぁ、話が戻ってしまった」
「当たり前だ。俺は教師だぞ」
「教師にあるまじき行いばっかりしてるくせに」

手元の解答用紙の右上で低空飛行している点数を見て、俺は溜息を吐いた。
それもこれもあの三人組がクリスマスについて話してたのがいけなかったんだと思う。
おかげで試験中、クリスマスデートに浮かれて碌に問題も解けなかったじゃないか。


「…平介に甘い物をたかろう」


どうせおっきなケーキを食べるだろう奴から慰謝料的追い剥ぎを決意していると、先生にまたぽかりと頭を叩かれた。愛が痛い。


2011/08/28 00:54





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