うそつき | ナノ



酷い男/リク



鉢屋の日記念リクエスト「男主で鉢屋号泣」



「お前は酷い奴だ。私の心の内も手の内もすっかり知り尽くしているくせに、のらりくらりと逃げてばかりで。それでいて思わせぶりなことばかりするのだから、私は何度泣いたか知れない!」

ぼろぼろと涙を溢す鉢屋に、堪えないと笑いだしてしまいそうだった。
無表情を作る俺の顔に何を思ったのかはたまた何か感じたのか、鉢屋の顔が歪んで瞳は大洪水を起こした。

「○の馬鹿、大馬鹿野郎。望みなんてないとはっきり言ってくれればよかったんだ。そうすれば私はお前なんて次の日にでも忘れて、どうかしてたんだ優秀な頭脳も時には迷子になるものさなんて嘯いて悪戯して饅頭食べて委員会活動の合間に後輩を構い倒していつも通り平穏に過ごして見せたさ!でもお前は私が諦めようとするたび邪魔をするもんだから!指を絡めて目元に口づけて、それに胸が高鳴る私がおかしかったか!?笑いたかったんだろう!?」

思ってもいないだろう言葉をすらすら吐きだす鉢屋は、いつもの余裕ぶった仮面が剥がれて…とても綺麗に見えた。せっかくの不破の顔はぐじゅぐじゅに溶けて見れたものじゃないし、先ほど頭を掻き毟ったせいでぼさぼさの髪と相まってまるで幽鬼の態だったが、それでもその姿は今まで見たどんな鉢屋より好ましく見えた。
俺を想い泣く姿が愛しくて愛しくて、堪えていた笑いがついに決壊する。
片や膝をついて恥も外聞も無く泣き叫び、片や腹を抱えて大爆笑。傍目には異様な光景だろう。

「アハハアハハハハハハ!」
「○の最低野郎!下種!お前が見かけ通りの優しい奴じゃないなんて、私も雷蔵達も、お前の馴染みの店だってとっくに知っていたさ。それでも○と恋仲になりたいなんて考えたのは、私くらいのものだ。とんだ物好きだ。自分で自分の趣味を疑うね!」
「そうか、お前そんなに俺が好きだったか!見栄っ張りのお前が体裁を棄てて泣き叫べるほどか!そうかそうか!」
「馬鹿○!」

俺はひいひいと呼吸を危うくする。うっすら涙まで滲んできたじゃないか。
そうか、そうだな。俺の粗野な面を知って好意を向けるなんて、確かにお前くらいだった。
物好きで、馬鹿な、どうしようもなく可愛い奴はお前くらいだったよ。


「こんなに人を惚れさせておいて、勝手に逝くなんて、本当にお前は酷い奴だ…っ」


溜まっていた何かが決壊したように泣き崩れた鉢屋は筵に包まれた俺の遺体に突っ伏して叫んだ。
俺のいわゆる霊体みたいなのはその真横で真っ赤になった腹抱えて笑い転げてるわけなんだがおいお前それじゃ俺がお前の泣き顔見えねぇだろ顔上げろ馬鹿どうせ非生産的な行為するならせめて俺を楽しませろ。
俺のブーイングなんて聞こえてるわけない鉢屋はそのまま肩なんて震わせちゃって。
あーあ。こいつどんだけ俺のこと愛しちゃってたの。



「嬉しすぎて、笑うしかねぇよ」



大好きな奴がこんだけ悲しんでくれてんだ。
俺の人生、そう悪くもなかったな。


2011/08/17 00:25





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