うそつき | ナノ


凶暴:残忍で非常に乱暴なこと。また、そのさま。



ある日空から降って来た奇妙な女。
不思議な衣を着て不思議な言葉を操る怪しい女は、争いを嫌い綺麗事を愛する、まさに世間知らずの箱入り娘。
訳の分からないことを主張して学園に逗留する彼女に何故か魅入られていく人間は、一人、また一人と増えていった。


僕がどうしてこうも彼女に注目するのかといえば、理由はただ一つ。あの気の多い女が今度の標的に選んだのが僕の大好きな○先輩だったからだ。
艶のない黒い髪の間から覗く光の無い瞳が怖がられるのか、そう多くない口数や長身からの威圧感がそう思わせるのか、○先輩の評判はあまり良くない。
荒くれ者、なんて、○先輩に全然似合わない呼び名だと思う。○先輩が理由なく無暗に暴力を奮った現場を僕は一度だって見た事はないし、それどころか僕が町で絡まれていた時は無言で相手をのして助けてくれた○先輩。その姿は昔物語で読んだ正義の味方そのものだった。


僕は大好きな○先輩に色目を使って、忙しい○先輩の邪魔をする天女という女が大嫌いだったし、彼女を崇める輩も同じだ。尊敬していた先輩達も、軒並み軽蔑の対象になっていった。


「大好きです!だから先輩、天女さんと出かけてあげてください!」


そして、ああ、また一人。
馬鹿な人。あんな強かな俗物の嘘泣きに騙されて、優しい先輩を言葉の刃で切りつけていく。平気な顔で音を使って殴りつけていくのは、あの女の嫌いな『暴力』に入らないのかな?
○先輩が小さく頷いたのを見て、もう用はないとばかりにいそいそと立ち去るあの男をもう二度と尊敬は出来ないなと感じていると、○先輩が急にその場に蹲った。


「○せんぱ、」


駆け寄ろうとして、目を疑った。
光を映さない瞳で何かを諦めたように過ごす○先輩が、荒くれ者と誤解され非難されても意に介さない○先輩が、助けられて思わず泣いてしまった僕の頭をぎこちなく撫でてくれた○先輩が、


「…っく…うぅ」


泣いている。










あの女とあの男を、消そう。


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スレ伏木蔵→夢主→数馬→天女→夢主


2011/07/19 23:22





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