[ 阿波くん放浪記 ] |
■2011/8/13 「小豆、本当に兄様だったのか」 「見間違いなんかじゃないのですわー」 運ばれてきた抹茶パフェを掬いながら、小豆はむっつりとむくれた。 向かいに座る巣立はコーヒーを飲みながらガラスに映る幼馴染のその顔を見て、眉を顰める。 学校に程近い町屋風のカフェの大通りに面した席で向かい合う男女は、あからさまに不機嫌そうではあったが、元が見目の良い二人である。通りを歩く人や店内のそこここからチラリと興味や好奇心のざわめきを向けられていた。もっとも当の二人はいつものことと全て無視していたのだが。 むくれたまま小豆はパフェをもう一掬いして、目線まで上げると黄緑色のクリームを不満そうに睨みつける。 「吉野様も兄様も、こそこそと例のお店に入って行きました。小豆はこの目でちゃんと見ましたもの」 「やはりあの男も一緒か…!」 忌々しそうに唸り、巣立はカップを握る手に力を込めわなわなと震える。 白く細い指の何処にそんな力があるのか、厚めのカップにピシッと亀裂が入った。幸い中味は既に入っていなかったので零れることはなかったが…。 「巣立くん巣立くん。小豆の兄様をあの男、などと呼ばないでくださいませ」 「…讃岐平野、は、なんと言っていた」 「相変わらず、小豆にはまだ早い、としか言ってくれませんわー」 まったく、兄様達はいつまで経っても小豆達を子供扱いばっかり! 少女の不満げな呟きに、向かいで座る少年も憮然と頷いた。 「まったくだ。年の差がこれほど厄介とはな」 兄を持つもの同士、何かと通じ合う部分は多い。 「私に黙ってバイトなどと…やはり兄様が何度撒こうとも、見張りをつけ続けるべきだった。いや、いっそ部屋から出ないでいただくべきか…」 ――例え、兄に対する感情が違っていても。 不穏な計画を立てる巣立を微笑ましそうに見ながら、小豆は最後の一口を食べる。備え付けのナフキンで丁寧に口許を拭いながら、不満を言い切ってスッキリしたのか柔らかく笑った。 「巣立くんは本当に吉野様がお好きですのね。カフェのバイトくらいいいではありませんの。小豆もしてみたいのですわーこふっ」 「…お前は先にその吐血癖をなんとかしろ」 赤く染まったナフキンを見て一瞬前までの不穏さを消し呆れた目をする巣立と、新しいナフキンで照れ臭そうに再度口許を拭う小豆の元へ、店の人がすっ飛んできたのは言うまでもない。 - - - - 店員の災難ww カップルの様ですが片方どろっどろです。あと小豆ちゃんが捏造にも程がある。 現パロでは巣立はいいとこの坊っちゃん。吉野は腹違いの兄。 |