[ 阿波くん放浪記 ] |
■2011/4/15 ルール説明 ・勿論ハンデあり ・相手を降参させるまでのデスマッチ ・七年生は事前に引いたくじで指定された武器のみ使用 ・くじに載っていた数しか使えない(例・武器:刀/上限:1) ・素手で戦ってもいいが、七年生は相手を降参させる際指定の武器を所持していなければ失格(※この事を上級生は知らない) ・「武器:好きなもの一種/上限:無限」というのもある 「ったく麗葉の奴…ま、なんとか時間までに返って来たけんええんやけど」 「先輩…あの…」 「あれ、俺の相手、伊作くんなの?」 「あ、はい!…じゃなくて!なんですかそれ!?」 「これ?これはそりゃ、見ての通り…」 「七年、阿波吉野、六年、善法寺伊作。前へ!」 首を傾げた阿波が怪訝な顔の伊作に説明しようとした瞬間、教師の声が響いた。 それに後押しされるように進み出た二人。周囲はざわりと揺れた。相対する二人の普段の仲の良さを知っているから?いいや、違う。 注目は、阿波の顔面。男前だとか綺麗だとかそんなんじゃない。唯一つ、今日の彼は……鼻眼鏡をつけていた。 それも鼻をバネで挟むという真面目な物じゃない。夜店で売ってそうな奇妙な鼻の付属した、瓶底眼鏡。 「よっしゃどっからでもかかってきなー」 「すごく不愉快なんですけど、それどうにかなりませんか」 「ならない。だってこれが俺の指定武器だから」 「……本気で?」 「本気も本気、大本気。俺の今日のくじ運、きっと保健並だと思う」 その言葉にうんうんと頷く周囲。保健委員長として聞き捨てならない台詞だが、今の伊作にはまたとない朗報でもある。 「それで出来る攻撃なんてたかが知れてる…阿波先輩には悪いですが、僕は今日本気で勝ちを取りに行きます!」 ガキンッ 「燃える伊作くんには悪いが、そうもいかない」 しゅっと一直線に飛んだ手離剣が、阿波に到達する前にはじき返された。 阿波は何もしていない。ただそこに立ち眼鏡をくいっと持ちあげただけ。伊作も見物していた周囲も目を見開く中、教師だけがにやりと笑う。まったく、また奇妙なものを。 「鼻眼鏡型戦闘からくりメガ・音一号…色々飛びだすから注意しろよ」 「「「ネーミングセンス悪!!」」」 「えっ、なんで!?」 きらりと眼鏡を光らせつつ放った決め台詞に、間髪入れず全員が突っ込んだ。幾人かの教師は先ほどの反動のように頭を押さえる。台無しである。 「その残念さ、さすが吉野ー」 「ひゅーひゅー」 「そこに痺れない憧れないー」 「さっさと勝てー」 「うっせ!おまはんら後で覚えとけよ阿呆!」 七年生の棒読みの台詞に怒鳴る阿波の鼻眼鏡の鼻部分から、お祭りでぴーひょろろと吹いたら伸びるアレが飛びだした。 何処からどう見ても宴会道具だが、先ほど阿波はあれを「戦闘からくり」と言った。伊作の経験上、阿波のからくり、とくに「戦闘」とまで付けるものがまともだった試しがない。 少し前に学園長の言い付けで共に山賊退治をした際、「戦闘からくりにゃんたーまん」とかいう猫の人形が恐ろしいことになっていた。伊作と共にあれを経験した数人は、それから数日猫を見るたび飛びあがった。 つまり、今回のあれもただの鼻眼鏡と侮らない方が良さそうだ。 「よーしメガ・音一号発進ー」 ぽち。阿波がつるにこれ見よがしに取りつけられたボタンの一つを押した瞬間、眼鏡がキラッと光った。意味が、分からない。 「特に意味などない」 「意味ないことしないでください!あと心読まないで!」 「伊作!気ィつけろ、段々吉野先輩のペースになっちまってるぞ!」 「っ!?」 外野から響く留三郎の声に、伊作がはっと体を緊張に強張らせた。 阿波はそれを見てにやりと笑い、別のボタンを押して、 ゴォォッ 「うぉあああ!?」 「ぎゃあああ!?」 眼鏡から噴き出した炎に、伊作共々驚いた。 「ちょ、うあっち!え、これ何!?」 「何って阿波先輩の仕業でしょ!?わ、髪ちょっと焦げた!」 「俺は額痛い絶対火傷してるこれ。っつうか俺じゃねぇよこんな危険な機能後輩との演習程度で付けるか!」 「でもこんなこと出来るの阿波先輩くらいでしょう!?」 「こんくらい俺以外に、も………う、」 「う?」 思い起こせばこの試合前、鼻眼鏡を持って行っていた武蔵から何とか奪い返した阿波。 その時にはもう試合直前だったので、慌てていた阿波は武蔵が何か言っていたのを「後で!」と遮った記憶がある。あの時、武蔵は「あ、鼻眼鏡カスタマイズしたよ」と言わなかっただろうか。言った気がする。 つまり、これは。 「麗葉ァァァァァ!!こんな危険な機能付けたんだったら最初に言っとけ阿呆ぉぉぉ!!」 今は少し離れた場所で同じく試合中だろう級友に向かって大きく吠えた阿波。伊作に向き直ると炎から逃れて尻もちをついたままの体を助け起こす。 「悪かったな。どうする?続行するか?俺、棄権してもいいぞ」 「…大丈夫です。これぐらい」 「おー男の子。よっしゃ、じゃあ続けるか」 「でも阿波先輩は、大丈夫なんですか?」 「ん?ああこれ?大丈夫だ」 黒焦げになってしまった鼻眼鏡を地面に捨てて、阿波は笑った。 その懐から、新しい鼻眼鏡を取り出しつつ。 「予備がある」 - - - - ここまで書いて力尽きました…なんぞこれ!とりあえず言ってたフラグ的なもんは入れた、はず? |