[ 阿波くん放浪記 ] |
■2011/2/21 「海巳の名前って綺麗やなぁ」 お日様がぽかぽかと暖かいものだから、なんとなく屋根の上でのんびり過ごしていると、隣で同じく寝そべっていた阿波が唐突にそんなことを言った。 山原はそちらをちらりと見て、首を傾げる。 「そうか〜?」 「ん。海はでっかくて綺麗やし。蛇も…うん、見方によっちゃ綺麗、なんかな。響きもええし」 「っはは、にふぇーでーびる」 ぽつぽつと語られる褒め言葉に、思わず笑ってしまった。 なぜならそうやって羨ましそうに告げてくる阿波が、なんとも眠そうな顔で、というか半分以上は寝ていたから。 むにむにと顔を擦ってはいるが、これではあと幾らもしないうちに夢の国へ旅立ってしまうだろう。 「うり。くまで寝てると、また七尾んかい心配されんぞ〜」 「大丈夫だ問題ない…寝てないけんー…」 「…寝ちょるやんやー」 否定しながらも睡魔に連れて行かれた阿波を眺めて、山原もゆっくりと目を閉じた。 「ゆくいみそーれ」 |