うれゐや

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【献上品・企画参加】 | ナノ

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銀魂高校3年Z組の教室は日当たりがよい。
午後からは特にぽかぽかと窓辺の席は暖かかった。

窓際の、しかも一番後ろの席に座っている土方トシも御多分に漏れず、睡魔に襲われかけていた。
バイト帰りに、少々難ありの恋人の家へ訪問したせいもある。
そのために、気が付くのが、少々遅れた。

「!」
さわりと耳朶を何かが触れる。
同時に背筋に甘い痺れが走り、一気に眼が醒めた。
ふわりと嗅ぎ慣れたタバコの香りが土方の鼻腔を刺激する。

バッと顔を上げれば、そこには緩く、やる気のない表情をした担任が教科書を読み上げながら立っていた。

ちらりとシルバーフレームの奥から朱い眼が土方に降りてくる。
悪戯を成功させた子供のような表情が見え、土方は相手をにらんだ。
担任は、お構いなしに読み上げ続けながら、節ばった指で再び耳朶を軽く嬲るような動きを再開させる。
指は徐々に耳の後ろから、艶やかなショートカットの髪にそって首筋をたどり、
襟足までなぞっていく。明らかに土方の官能を呼び起こすような意図を含んでいた。

「ひっ!」
思わず、くすぐったさとは違う感覚を拾い上げた土方は口元を両手で押さえた。

皆が前を見ていることをいいことに自由に動く担任に抗議を兼ねて、ノートの端に『セクハラ』と書いてみせれば、にやりと笑って、また教卓の方へと歩み戻していく。

日本人には珍しい銀髪の、好き勝手跳ね返った天然パーマの、だらしなくよれた白衣の背。
その背を眼で追いながら、土方は深く深くため息をつく。

途中、足を止めて教師は気だるげな音読を停止した。

「続き…あ〜、土方。6行目から読んで」
「はい」
指定された6行目ではなく、勝手に8行目から教科書を読み始める。
銀八は訂正するでもなく、教卓へまた歩きはじめた。

それは合図。

『今日は6時には帰るから』
『バイトだから8時にしか自分は帰らない』

銀魂高校3年Z組担任にして、土方トシの難有りの恋人・坂田銀八との秘密の逢瀬の為の合図。


教科書を読み上げ終わり、着席すると土方はそっと目を伏せる。
今日も睡眠不足になるなと小さく口許に笑みを浮かべながら。




『Dear my teachers T』 了
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