うれゐや

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【献上品・企画参加】 | ナノ

V




「土方くん」


土方が帰り支度をしていると、廊下から声がかかった。

「伊東?」
2年まで同じクラスだった伊東鴨太郎が軽く手をあげ、呼んでいる。

「話がある」
「なんだ?」
元々、土方と伊東は付き合いが普段からあるわけではないから、首を傾げる。
お互いに学年トップの成績を争っていたという接点ぐらいだ。
伊東の家柄や知識をひけらかす態度をあまり土方は好ましいとは思っていなかったし、土方のあまり勉強の出来る方だとは言いがたい幼なじみたちを明らかに見下す態度に近づこうとも思っていなかった。

「昨日、合格通知が来た」
「あぁ、そうかよ」
一方的にライバル視している相手に自慢したかったらしいと納得した。
土方は3年に進級した時に家庭の事情から特進クラスには進まなかった。
その時も鬱陶しいくらい何故だ何故だと喚いていたから、また『やはり君の選択は間違った』とか『僕は一足先を常に進んでいる』とかなんとかご高説を垂れるつもりなのだろうとげんなりしてきた。
ところが予測は大きく外れた。

「これで僕の将来はまた確実なものになった。だから…
君は僕と付き合うべきだ」
「は?」
思わず、後退した。

「結婚を前提に付き合ってほしい」
それを許さないかのように手を掬い取られ、一歩寄ってくる。
まだ、残っていたクラスメイト達がざわめいたのが背に伝わる。

「伊東?何言って…」
「君は美しい」
「は?」
銀八や幼馴染からしか褒め言葉を聞くことのない土方は聞き返した。

「頭脳の明晰さは皆の知るところだが、その野暮ったい制服の着こなしも、顔に合っていない古臭い眼鏡も、女性らしからぬしゃべり方もわざとそう振る舞っていることなど、僕にはお見通しだ。調べたよ」
「伊東?」
伊東の頓珍漢な言動は今始まったわけではないが、話の行く先に懸念が起こる。

「君の家柄だって…」
「伊っ!」
庶子であることを言われるのかと怒鳴り、止めさせようとした。
が、後ろに引かれ、土方はたたらを踏み、声を飲み込む。
自然と伊東に握られていた手も離れていった。


「なにやってんの?」
引っ張った主の声はいつも通り緩い。
だが、不穏な音を含んでいることを土方は聞き逃さなかった。

「坂田先生」
思わぬ闖入者に伊東が鼻白んだ。

「土方君と僕の極々プライベートな話し合いですので」
「へぇ」
土方の肩に大きな手が食い込む。

「伊東。お前と付き合う気はないから」
その力加減に銀八が静かに怒りが伝わり、慌てて土方は断りの言葉を紡いだ。

「でも、今、付き合っている人間はいないのだろう?なら、試用期間ぐら…」
「けど」
いないわけではない。
でも、公に出来る相手ではない。
担任教師と教え子。
卒業後ならまだしも、道徳的に許されないと世間からは言われる立場。

「けど、好きな人くらいは俺にもいる」
「嘘をつきたまえ。君のような人が認める相手等にそうそういるはずが…
 オメーが認める基準と土方のそれは同じじゃねぇだろ?
 さっき、いいかけた言葉から察するに土方の血統調査でもしたか?
 そんな小さい規模じゃコイツは落とせねぇよ?」
口調は変わらないが、そこには底冷えさせるような響きが横たわっていた。

「せんせ…」
「そういうことで、見世物はこれにてお開き!ほい!下校下校」
遠目で様子を窺っていた生徒たちにぽんぽんと手を打って見せると、教室のざわめきが再び戻ってきた。

「土方も。いくら、もっさりしたオメーでもまたあんなストーカーが出てくるかわからないからな。サッサと帰れ」
「はい…」
間に入ってくれたのは、嬉しい。
嬉しいが、銀八の嫌味に少し苛立ちもしていた。

「土方」
「…わかってます。ダサメガネは大人しく帰ります」
わざと、眼鏡を取って瞳孔が開いていると言われる目で、元々険のこもったと勘違いされる視線にさらに、本当の険を乗せて睨んでやろうかとも思った。
が、止めておく。

「土方」
「わかってます。坂田先生」

相手が何かまだ言いたげであることは分っていたが、土方は自分の席に戻る。
銀八も諦めたらしく、いつもの死んだ魚のような眼に戻ると、日誌で肩をたたきながら職員室に戻って行った。

荷物を取り上げる。
そして、茜色に染まる校舎を後にした。







下校しながら、何色もの色彩を含めた、夕焼け色の美しさに心洗われることもなく、
モヤモヤが増していく心のうちに舌打ちしたくなった。


「土方!」
「先生?」
原付の音と共に名を呼ばれ振り返った。

銀八がバイクを押して、土方の横を歩く。
「悪かった」
銀八がぼそりという。
「別に…」
何を謝ってるのか、すぐにわかる。
『ダサメガネ』でいろといつも言うのは銀八自身であるのに、人前で貶めるような発言をしたことを謝っているのだと。
それでいて、確実に銀八は怒っているままなのだと土方は感じ取っていた。

「バイト、ないだろ?明日学校休みだし、うち来るよね?」
「………わかった」

付き合っていることは秘密なのだから、一緒に家に行くことは危険な行為だ。
けれど、こういう時は逆らってはいけない。
この半年足らずの間ではあるが、嫌という程の経験から学んだことだったのだ。





銀八のアパートにつくと、急に足を纏めて抱えられ、荷物のように持ち上げられると、バスルームに連れ込まれた。
「な?!」
制服のまま、いきなりシャワーがかけられる。

給湯器が働きはじめる音が聞こえるが、こぼれ落ちる水滴は未だ冷たい。
ぶるりと土方は肩を震わせた。
寒さと、銀八の静かな怒りのこもった眼鏡を外した紅い眼に。

ボディソープが両手首に塗りたくられる。
「先生なにす…」
「消毒」

伊東に触れられた場所を、暗にそう言われた。

「洗うけど!こんな…」
シャワーに容赦なく濡らされ、まと割りつく制服が重たい。
セーラー服の袖口から銀八の指が徐々に侵入してくる。

「触らせるなっていったよな?」
「んなこと…」
「ダサメガネだろうと、わかるやつにはわかんだから。
 オメー、最近エロさ駄々漏れだからね?気をつけろよ本当に!」
「エロくね…んあ!」
スカーフが引き抜かれ、襟側から手が入ってくる。
プチプチとホックが外れていく音が水音の隙間に聞こえた。
強引に覗かせられた胸の飾りを壁に身体を押し付けられるような強さで揉みしだかれ、思わず声が漏れる。
段々と冷水から熱い湯に変わり始めたシャワーがかけたままだった土方の眼鏡を曇らせた。

舌が口内に忍びこんでくるが、フレームが顔を圧迫して顔を顰める。
それでも、夏に花を散らされて以来、何度も身を委ねてきた躯はすぐに息が上がってしまっていた。


同時にスカートの中を大きな手のひらがまさぐり始めた。

「あ…」
指が下着の隙間から指し入れられて秘部を撫で、擦っていく。
既に水の感触でない少し粘り気のある液体が下着を湿らせていることを知られてしまったと、また体温が上がった。

「せんせ…待ってっ」
「制服のまま、って初めてだっけ?いつも脳内では犯してるけど」
「馬、鹿」
「こら、先生に馬鹿とかいうんじゃありません」
薄笑いながら、土方の腕を自分の首に回させ、片足を高く持ち上げる。
スカートが持ち上がり、素足にいつのまにか寛げられたのか銀八の猛々しいものが直に触れた。

口の中を隈無く舌が這いずり回り、下着と足の付け根にぬるぬると擦り付けられる。

「ん…ぁぁあ…」
膝から力が抜けそうになった躯に熱が侵入を始める。

「やっ!」
制服を着たまま、下着もずらされただけの状態という居たたまれない状況にどうして良いかわからず、銀八の肩にしがみついた。

「制服着てようと、眼鏡かけてようと」
一気に下から突き上げが始まる。

「土方は俺のだから」

舌を絡ませながら、ゆっくり腰を動かされ甘い疼きが腰から脳点まで這い上がってくる。
入口から最奥までゆっくりと捏ね上げられる。

浮き気味の体はバランスを取れず、ただ翻弄され、甘ったるい声を抑えることができない。

「ぁぁぁ」
頭が空になってしまう。

「トシ…」
呼ばれて、頂に登り詰め始めていた土方は強張った。

「や!駄目っ」
「味わって」

身体を捻るが半分抱えられるような体勢から、それは叶わなかった。

「なか!だめっ!あ?!あぁ」
最奥に注ぎ込まれるのを感じる。
「あ…あ…」
満たされる。
身体の中が。
最後まで出し切るように銀八の腰は細かく動き続ける。

充たされる。
みんなの銀八先生ではなく、ここにいるのは『土方の銀八』なのだと。


繋がったまま、眼鏡が外され、また唇が重なる。
「駄目だっていってんのに」
「だって、我慢出来ねぇ」
悦に入った声で土方の耳に吹き込まれ、また背筋が痙攣した。

「え?」
再び体内の銀八が脈打ったのを感じて土方の頬がひきつった。

「だって土方が締め付けるし、可愛いし、先生まだ若いし…」
銀八の手が器用に濡れたセーラー服を剥ぎ取っていく。

動くたびに、また硬さを増し始めた凶器が土方をまた刺激して息が上がる。

「やっぱり土方がエロいのがいけないんだと思います」

バスルームの床に二人ぶんの衣類を脱ぎ散らしたまま、
もつれるように寝室に移動したのだった。



『Dear my teachers V』 了








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