うれゐや

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【献上品・企画参加】 | ナノ

1月1日




1月1日午前0時



「土方」
「なんだ?」
聞き返してくる表情には敵愾心も対抗心もみつけることは出来なかった。
「土方」
「だから、なんだ?」
昨日一日、先入観を取り除いて土方十四郎を見てみた。
悔しいことだが、サラサラストレートであることを差し引いても、整った顔をしている。
女顔という訳でもないが、『綺麗』。
いつも、眉間に皺を寄せて、強面集団を恫喝している姿か、胸ぐらを掴み合い、怒鳴りあう顔や意地を張った表情ばかりみていたが、無心に家事をする横顔は穏やかで、年相応にみえた。


「明けましておめでとう」
「あ?おめでとうございます?」

素直な性格は太刀筋にも表れている。
それを好ましいを思っていたし、本来土方のようなタイプが特段嫌いという訳ではないのに、何故これほど彼の事を見ようとしなかったのか。

「ちょっと名前、呼んでみてくんねぇ?」
「万事屋?」
「いや、それ名前じゃないよね?」
「坂田?」
「うん」
胸の中心にじんわりと感情の色が咲く。

「坂田…銀時?」
「うん。間違いないわ」
真選組馬鹿で、
ゴリラ絶対で、
マヨネーズとニコチン中毒で、
体格も銀時と変わらない成人男性で。

けれど、心のどこかで魅かれる自分を知っていた。
無意識に歯止めをかけていたのだ。

「なんだ…んっんんん?!」
零れた声を押し留めるように土方の口を自分のもので塞いだ。
顔の角度を変えて、吸うように、上唇を軽く食むように口付ける。

一度、納得すれば、
一度、触れてしまえば、
止まれなくなっていた。
息継ぎの為に薄く開かれた隙間から舌差し入れを土方のものに絡める。

唾液をのせて繰り返せば、徐々に全力疾走で駆けた後のように息が上がっていく。

「なんだ…こりゃ…」
「なんだって、キスですけど?」
「そういうこと言ってんじゃ…」
なぜ、自分にキスなどするのかと、そう問うているのだとは分っている。
ただ、何と説明していいのやらと銀時は珍しく言葉の思いつかない自分に苦笑する。

「土方」
名を呼んで、今度は軽く唇を擦り合わせるだけで問う。

「オメーは嫌?」
「…嫌?」
逆に問われて、戸惑っているようだった。
男にキスをされても、普通であれば気持ちが悪いだけであろうが、先ほどから土方は避けるでもなく、抗うでもない。
こたつに並んで座っているから、狭くて逃げ場が少ないが、かといって銀時の手は土方の頬を固定するだけで、それほど力を入れているわけではないのだ。

返答に困っている男の様子がまた銀時を勇気づけ、思いつくままの言の葉を発せさせた。

「銀さんの銀さんが何故か土方くん見てたら、ムラムラしたまんまでさぁ、
 除夜の鐘が鳴る頃ぐらいまでなんでだろうって考えてた」
「ムラムラ?」
「そ、ムラムラ。で、108の鐘が煩悩祓ってくれたら落ち着くかななんてはずなのに、
 変わんなくて…名前呼んでみた」
「……」
「年明けて、ここから一斉によーいどんって仕切り直しの一番最初に、
 誰の名前でもなく、土方を呼べることが、呼んでもらうことが、そのアレだ」
その先の言葉はあまりにも簡単な言葉なのだけれども、それを口にするには銀時の性格が、少々、いやかなりの羞恥を呼び起こし止まってしまう。
窺うように、土方の顔を見れば、その光彩が揺れていた。

「そうか」
そっと、こたつの中にあった土方の手が動き、
銀時のこめかみ近くの髪を梳くように後ろに撫でつけ、少し顔を押し返される。

「よーいどんはいいが、勘違いでしたで引き返すんじゃねぇぞ?」
「あ…?あぁ…まぁ、うん。俺は大丈夫じゃね?それより、これでも銀さん独占欲強いからね?オメーこそ、大丈夫なのかよ」
「上等」
にやりと笑い、今度は土方の方から口を寄せてくる。
それを、絡め取った。

唇を挟み、伸ばされた舌に舌を絡め、溢された吐息に一気に熱が煽られる。
それほど量は飲んでいない筈だが、それでもアルコールの入った口内は熱く、舌裏も歯裏もどこも柔らかく感じた。
唾液の交換で起こる水音も熱を加速することに一役買っていた。

キスだけで、すでに身体は目の前の男と一つになりたいと訴え始めている。

相手の身体を押し倒し、着流しの襟をそっと割った。
決して華奢ではない胸に手を滑らせると、バランスよく付いた筋肉の適度な弾力が指先に伝わり、胸の飾りは控え目にとがっていた。

「んなとこ…」
「あ?気持ちよくねぇ?じゃあ、あれだな。今後要開発ってことで」
指先で転がしたり、
「死ね!」
「ハイハイ」
目元を潤ませて言われても、恐ろしくはない。
むしろ、居心地悪そうに動く土方の動きが気になった。

手を下げ、すっと股間を撫でれば、堪らずといった吐息が洩れた。
硬くなった中心が、土方もまたキスだけで、熱を上げてくれていることを証明していると嬉しくなり、性急に帯を解き、銀時の前も寛げた。


土方の既に芯を通し始めている性器を外すようにして、下着を抜き去り、皮膚の薄い敏感な内腿を撫で回す。
脚の付け根を撫でると一際大きくその腰が揺れた。

「万事屋…」
直接的な刺激が足りないのか、眉を寄せて呼ばれる。

「なに?」
「ここで…?」
「悪ぃ。でも布団引く時間、勿体ねぇ」
手を取り、既に起き上がり始めた自分のモノを触らせて状況を知らせる。
先程から朱かった頬が更に朱に染まった。

そんな様子を嬉しく思いながら土方の中心をきゅっと握り込んでやる。
「んぁ……っ」
甘い、甘い吐息が緩やかに上下させる手の動きに合わせて喉から毀れる。

「ちょっと、ごめん」
銀時は土方の身体を裏返し、腰だけを持ち上げる。
そして、天板の荷物を少し片付け、土方の上肢を預けさせ、後ろから腰を引き上げた。

双丘を割り開き、ねろりと湿った舌を這わせる。

「!なにしてっ」
自分のされていることに気が付き、腰を揺すって抵抗しようとするが、後ろから中心を握り込んでいるので、それほど大きな動きも出来ないようだった。

蕾に唾液を出来るだけ送り込みながら、指を入れる。
反対の手は土方の幹を扱きながら、少しでも痛みが無いようにとゆっくりと。

「ふ……、んぅ」
徐々に異物感よりも、直接的な刺激に透明な液があふれはじめ、扱く手の動きがスムーズになっていく。

「気持ちいい?」
「あっ…聞…くなクソ」
爪先で先端の小穴を引っ掻くように刺激擦れば、また高い声で啼いた。

蕾を徐々に押し開くように、関節を曲げたり、唾液と猪口に残っていた酒も使いながら指の数を増やしていった。
鉤状に指を曲げ、しこりのようなものを見つけると、一際熱っぽい吐息を鼻腔から溢しながら土方が喘ぐ。
それに気をよくしながら、3本の指がのみ込む様になるまで、なんとか己の分身を宥めすかした。

「こっちむいて」
最初は後ろからの方がいいと聞いたこともあるし、女を抱いた経験しかないが、後ろからの体位は銀時の征服欲を満たしてくれるから嫌いではない。
だが、今日は顔をみて繋がりたいと思った。
こたつ布団の上に横たえ、両足を広げさせる。

(予想以上に嵌まっちまったな)

「なんだよ?」
ふっと漏れた笑いに気を悪くしたのか、相変わらず赤い顔のまま視線が返ってくる。
普段ストイックに見える分、欲に濡れた瞳のインパクトが強い。

「挿れるから」

手を離してもそそり立っている屹立を先程まで指を入れていた場所に押し当てた。
土方のものも、先端からは蜜をたらたらと零し続けていた。

「っ」
張りだした部分を押し込むと、肉が押し開く感覚がダイレクトに伝わり躊躇する。

「息吐いてて」
一気に腰を推し進めて、くびれまでを体内に押し込み息を吐く。
絡みつくように蠢く内壁が銀時をすぐにでも頂点へと導きそうだった。

(新年から三擦半とかないからね。コレ)
荒く息を吐き、土方の棹を刺激しながらゆるゆると押し込んでいった。

「はぁ…んぅ……」
先程見つけた、おそらく前立腺と呼ばれる部分をすると、声の色が変わる。
土方の薄く開いた唇から喘ぎがこぼれ落ちた。

「土方」
腰を揺らしながら、名を呼ぶ。
固くうっすらと開かれた瞳に自分が映っている。
「繋がったな」
「……っ」
耳元で囁くと、深いところを刺激したのか、声に反応したのか、腸壁がぎゅと更に銀時を中に引き込むような動きをみせ、息を詰める。

「わざと…じゃねぇよな?」
「な…に…?」
「土方んなか、サイコーって話」

荒くなる息をごまかすように激しく腰を動かし始める。
酒と唾液と銀時の先走りがぬちゃぬちゃと動きにあわせ、淫靡な音を奏でた。
土方にも気持ちよくなって貰うために、土方自身を擦る手を上下させながら、前立腺を狙って硬い頭部分で擦りあげた。

「よ…ろ…」
濡れた視線がすがるように銀時を捉える。
「イって」
ラストスパートとばかりにグラインドを激しくする。

「や、や…」

土方の背筋が反り返り腰がさらにぐっと浮き上がった刹那、膨れ上がった先端がどくんと弾けて精を吐き出した。
コンマ何秒か違いで銀時も土方の中に注ぎこむ。

「はっ……、あ……っ」
お互い、びくびくと下腹部を震わせながら、何度かに分けて吐精をした。

「土方」

繋がったまま、キスを再び交わせば、まだ緩やかに角度を保つ銀時自身が快感に敏感になった土方の身体をしならせ、また銀時を締め付ける。

「この年で抜かずの何とかはないと思ってたんだけど」
「…あ?」
「まぁ、銀さんも、銀さんのマグナムもまだまだ若いってことで」
「え?ちょっ!まっ…あっ…は…」
再び律動を開始すれば、後孔からはとろとろと白濁が溢れ、滑りを、熱を加速させた。

煽り、煽られ。

気がつけば、意地の張り合いの意味は何と単純なものか。

「明けましておめでとう」

三度目の吐精で、気を失った土方の前髪を漉きながら、
初めて迎える土方との、
新年を
姫初めを
新しい関係を

そんなものを思い、そっと額に唇を寄せる。


「今年も、いや、今年からよろしく」

迷いながら、これから…





『迷悟』 了




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