うれゐや

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【献上品・企画参加】 | ナノ

幕―時成る―




戌威星の大使館への爆弾テロを警戒して、張り込んでいる最中のことだ。
大使館前から逃げ去る桂を双眼鏡越しに目視し、いよいよ拠点を叩くためのシナリオを頭の中でもう一度確認する。

爆風と追っ手を避けるために走り抜ける者たちの中に、見慣れぬ銀色がいた。

洋装に白い着流しを纏った風変わりな衣裳に天然パーマ。
翻った流水紋の柄が記憶に残る。
はて、と土方は煙草の煙を肺に吸い込み、考える。
知っている顔だと思ったのだが、曖昧だ。
桂小太郎の手配書を眺め、桂関連だろうか
ニコチンは思考をクリアにしてくれる効果をもたらしてくれるが、どうにも銀髪のことは明確に思い出せない。

「オイ、起きろ」

まとまらない思考の代わりに紙を丸めて、昼寝を決め込んでいる沖田に投げつけた。

「真選組の晴れ舞台だぜ」

武州から出てきて、浪士組から真選組に。
大将である近藤を軸に走って行く。
それに変わりはない。

「楽しい喧嘩になりそうだ」

喧嘩の予感だけではない、別の予感を感じながら、無意識に土方は心臓の上を握りしめたのだ。



『時成る』 了






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