うれゐや

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【献上品・企画参加】 | ナノ

『from a beginning to a beginning U』




「おじゃましまーす」


靴を脱ぎ、一人暮らし用の小さな部屋へと勝手に上り込めば慌てて土方も追いかけてきた。

「おい!ぎんと…」
「『銀八』だ」

土方の声を今の名前を自らのもので被せた。
銀八としては正直な所どちらでも気ならないのだが、土方があくまでこだわるならば、そう呼べばいい。
どちらにしても『同じ』なのだ。

銀八の予想通り、部屋の間取りもインテリアもシンプルだった。
小さなテレビ、ローテーブルとソファ、本棚には参考書の類と部屋の隅のマガジン。
そして、壁に片辺を引っ付けたシングルベッド。

そこに腰を降ろして呆気にとられたままの少年を見る。

「銀八でも銀時でも変わらねぇ。頭で考えたって答えなんてでねぇよ」
「…腐れエロ天パーーーー…」
「うん、相変わらずで悪いけどよ。身体で考えんのが一番早いって」

親指で自分の心臓を指示してみせる。

それから、手を差し伸べた。

人一倍努力家で、人一倍冷静なくせに、人一倍情熱的で、意地っ張りで
そして、己のことはいつでも後回し。

何処まで行っても真っ直ぐに走ろうとする男の魂に焦がれるのだ。
その魂に、身体に、楔を穿ちたいと思う。
繋がって、征服したいと思う。

伸ばした手がいい加減に怠さを感じ始めた頃、ようやく、重たい吐息が部屋に零れ落ちた。

「そうだな…ガラでもねぇな」

手を取ってはくれはしなかった。
その代わり、もう一歩前へ。
銀八の正面に立つと頭を抱き込まれた。

思わず吹き出せば、その振動がくすぐったかったのか引こうとした腰を引き寄せ、そのまま、膝にのせて身体を密着させた。

柳のような腰。
煙草臭くない身体。
基礎的な筋肉を纏いながらも、まだ明らかに成長過程。

「なんか…こう…クる…」
「やっぱ帰れ」
「だって仕方ねぇよ。土方くんがエロいのが悪いんだと思います」
「ん…あ?ちょ!」

制服のシャツをズボンから引出し、素肌に手を這わせ、ボタンを解放していけば、鼻から息が漏れる音が頭上で響き、それに煽られながら唇を腹から胸へと上げていく。

唇で瑞々しい躰をなぞりながら、心拍数をよりあげた心臓の上を強めに吸い上げた。

「ここは俺の」
「……馬鹿が…」

そのまま、顔をずらして桜色の突起に舌を這わす。
今度はひっとかひゃっとか言う声が聞こえて、銀八の方がびっくりして顔を上げた。

「何、くすぐったいの?」
「なんか…へんな感じ…だ…」
感じていないわけではなさそうなので、また舌で転がすように嬲ってみる。
まだ一度も他人から愛撫を受けたことがないであろう身体はどこもかしこも瑞々しい。

「そういや、土方くんは童貞だよね」
「く、口あてたまま、しゃべ…んな…」

唇を徐々に上げて、鎖骨を甘噛みし、首筋をたどって耳朶へと向かう。
徐々に上がってくる息、そして土方のものが育ち始めたことが密着させた腹に伝わってきた。

ぎゅっと噛みしめた唇を解くべく、舌先でノックし侵入する。
記憶の中とは違う甘い口内。

それを貪りながら、ファスナーと引きおろし、土方を外気に触れさせる。

「お!もう完勃ちじゃねぇの」
「い、言うな!」
「アレかね…若いから…」
「だ、から、黙れ。ぁっ!」
既に蜜を零し始めていたものをぎゅっと握れば、どくんと脈打ち白濁が銀八のシャツを濡らした。

「ありゃ、本当に早かったな。最短じゃね?」
「うそ…だ…」
吐精した本人も自分の事態が信じられないらしく、視線を下げたまま動きを止めている。

白い液体はトロトロと幹を伝い落ちていく。
一度膝から持ち上げ、身体を捻り土方をベッドへと転がす。
汚れたズボンと下着を一気に引きおろし、銀八も自身のシャツを脱いで床に放り投げた。
そのまま圧し掛かりながら、むき出しにした自分の性器を今吐き出したばかりの土方のものに擦り付けた。

「やっぱさ、記憶があったってことは、土方君のオナニーって俺が相手だったんだよね?じゃあ、後ろも嬲ってみたりした?」
蕾の周りをくにくにと押してみれば、途端に白い肌が朱に染まった。
「だだだ…」
「だ?」
恐らく続きはまた「黙れ」。
ということは間違いないとにんまりと口角を引き上げる。

「そうだよね。土方くんは後ろだけでもイケてたもんね。前の身体の時は」
「以前は以前だ!イケるわけねぇだろうが!」
「あ、試してはみたんだ」
「ちちちち違う!断じてそんな…」
「まぁ、銀さんがどっちの『初めて』も全部貰うわけだし?
 ほら負担かけたくないから聞いてみただけなんですけど?どうなの?実際のとこ」
わかる?と蕾を嬲る指を本格的に捻じ込みながら首を傾げて見せる。

「し…してみたけ…ど…」
「うん?」
「自分じゃ全然気持ちよくなくてやめた…」
ぷいっと顔を真っ赤にして中指の第二関節を噛みながら言われても、銀八の下肢を更に張り詰めさせるだけだ。

唾液を交換するようなキスをまた繰り返せば、伏せられたまつ毛の陰影がふるふると震えている。
元々整った顔の男だった。
前世であった時には既に20代の半ばを過ぎてはいたが、男前なくせに男臭さを感じさせない肢体も持っていた。
その気になれば女にも男にも苦労はしなかったはずだ。

それでも十四郎は銀時を選び、他の誰にも見せない艶姿を晒してくれていた。
多少偏りのある銀時の性癖に呆れながらも付き合ってくれた。

それなりの経験を持つ大人の男でありながら、何処かいつも初心な反応をする。

しかし、今銀八の下で蠢いている生き物はまたそれを凌駕していると息を呑む。

『銀時』が出会う前、おそらく武州に居た頃と同じぐらいの背格好。
記憶のものよりも、もっと骨格が全体的に薄く、中性的にすら感じる。
まだ異性も同性も受け入れたことがない成長過程の16歳の身体。
そんなハードを持ちながら、強く銀八の下から目元を赤く滲ませながら睨みつけてくる強い視線は土方その人。
ソフトは『鬼の副長』の記憶を持っているわけであるから、脳内には銀時と繰り返した閨の経験が入っているはずだ。

これくらいでどれくらいの快感を拾うのかという経験値を頭で知ってはいるが、実際に神経に伝わってくるそれは食い違っているのだろう。

身体と精神のバランス掴めず、動揺する様は銀八の嗜虐心を増幅させるスパイスにしかならない。

「堪らねぇな」

一方の銀八は『銀時』の経験を引き継ぎつつも、すでにこの身体でそれなりの実技も体験済みであるからその辺りはあの頃のようなバカみたいな体力がないという点以外はそれほどの違和感はなかった。

一度身体を離せば、荒い息をつきながら青灰色の瞳が銀八の動きを追ってきた。
見せつけるように、ズボンの後ろポケットから準備していたローションを取り出して、銀八もまだ身に着けていたスラックスと下着をすべてを取り去った。

欲に濡れた瞳で土方の喉が期待にこくりとなるのが確認できる。

「んぁ!」

潤滑をよくする為の液体が冷たかったのか、大きく身じろいだが、構わず二本目を追加し狭い通路を押し広げていく。
同時に一度吐精した前も強弱を付けて扱いてやれば、直ぐに若い身体は硬さを取り戻していった。
身体を折り曲げるように腰を持ち上げ、ふっと息をかけると更に質量は増して、ひくりと透明な露を零し、胸部へと滴り落ちていった。

「悪ぃ。まだちょっと早ぇかもしれねぇけど」
「四の五の言ってんじゃねぇ。この場に及んで」

緊張しているのか強気なセリフとは裏腹に酷く掠れた声が返る。
逆にそれが銀八を煽った。

「…くっ…ンッん…っ」

準備はとうに整っていた楔の先で、数度蕾の周りの皺をなぞり、熱い粘膜の中に腰を進めた。
離れていた時間と空間の隙間を埋めようと、ゆっくりと繋がるつもりがいざ痴態を見てしまえば、抑えることは叶わない。
馴染むのを待つわけでもなく、ただ徐々にではあるが引くことなく真っ直ぐに押し入る。

「…や…っ]

堪えるかのように下がった柳眉、その下の長い睫毛の下から一筋の涙が零れ落ちていく。
けして拒否の証ではない、左右に流れていくその滴を唇で受け止めながら囁く。

「また繋がれて嬉しいよ。土方くん」

仰け反った喉元から艶めいた音が零れたかと思えば内部がきゅうと締まり、危うく銀八もつられて欲を吐き出すところだった。

「え?なに?お前、またイッたの?」
「っ!う、うるせっ」

まだ、感じるであろうポイントを擦ったわけでもない。押し入っただけで動いてもいないのにも関わらず、白い体液が土方自身の腹を濡らしていた。
声、もしくは言葉で感じ入ってしまったらしいと顔が自然と緩む。

「可愛い。土方くん」

汗ばんだ額に張り付いた髪の毛を撫で上げ、そこにキスをする。
こんな甘い行為は『銀時』であった頃はした事がない。
少し曇った眼鏡の内側から視る土方は欲を吐き出したあと特有の艶に濡れた顔をしていた。

「見とけよ?オメーを抱いてんのが誰なのか」

行為の最中に危ないと言えば危ないのだが、敢えて眼鏡は外さぬまま律動を開始する。

「…あっ、あ…んっ、や…ッ」

腰を一旦引き、じわじわと押し込みながら浅く深く接続加減を調整する。
徐々に土方の腰も揺らめき始め、快感に流されつつあるのか、声が零れる頻度が増えていった。

「土方…な?気持ち…いいだろ?」
「んっ」
グラインドの角度を変え、わざと前立腺ばかりを狙えばまた、大きく喘ぐ。

「俺も気持ちいいよ?感じて?ほら…何回だってイッていいから」
「ばっ」
「ほら、オメーん中は正直だよな?俺の離したくねぇって?」
「く…そ…」
指先で先端を嬲り、溢れてくる透明な液と先程の残滓を綺麗な顔に塗りつける。

「な?見て?」

声に反応して、水分を多く湛えたまつ毛がふるりと上った。

「ぎ…ん…?」
「そ、銀さんは独占欲強いって言ったよな?
 それ大腕振って実行できるようになったってぇのに遠慮するほどお人よしじゃねぇ」
土方の指が銀八の肩を撫でる。
恐らく、銀時に土方が付けた傷の痕を確認しているのだろう。
『土方』のくせのようなものだった。
もちろん、銀八にそんな古い刀傷があるはずもない。

「…大腕…振る…のかよ?この淫行教師」
「淫行教師ってオメー、どこのAVのタイトル…ってあれ?そっか、16か。
 R18タイムにはちっと足りなかったか。まぁ仕方ねぇか」
「仕方ねぇじゃねぇだろうが」
「いや、だって土方くん、存在自体がR20指定だから」
「だれが…」
舌打ちする土方の乳首を少し強めに噛めば小さな悲鳴のような息を吐いた。

「俺と生きて?」

真選組と、己の誇りに生きた男だった。
その立ち姿が好きだった。

それに比べて、今の十四郎の人生は確率されていない。
幼さの残る身体、無限の可く能性。
今度はそれを一歩下がってみているのではなく、その過程に関わっていたい。

「ぎん…ぱち…」

大きく腰を一度引けば、内壁が引き留めるかのように銀八についてくる。
逆の腰を押し込めば、押し広げられる肉と熱が楔全体を刺激してきた。

密着させていた身体を一度離し、土方の腰を高く持ち上げて足を拡げる。
そうして、上方向からぐっと押し込んだ砲身と蕾、そして土方の顔を上から眺めた。

「見ろよ。繋がってるとこ」

空を彷徨うように細い腕が持ち上がった。
答えが出たのだと、上から顔を寄せれば土方の指が眼鏡のフレームにかかり、かしゃりと音を立てる。
髪に引っ掛かり、少し痛みを伴ったが、銀八は外す動作を制止しなかった。

「もう…いらねぇ…」
「そ?」
自分のベッドの上だから距離感などわかりきっているのだろう。
視線を動かしもせず、外した眼鏡をヘッドスペースに置いて、少年の顔で声に出さず、
口の形だけで名を呼ばれた。
ゆるゆると最奥まで押し込み、顎の先にキスをすると今度は大人の顔でニヤリと笑われる。

「ちんたら生ヌルイ動きしてん…じゃねぇよ。歳か?」
「ほう…言ってくれるじゃねぇの」
「んぁ!」

本格的に律動運動を始めれば、懐かしいようで、まだ知らない収縮が銀八を頂点へと誘導する。
前立腺を擦り、鈴口を指で刺激し、貪った。

「もっ…ぎん…むり…」
「ん…俺もイクから…」

本当は卒業を待つべきだったかもしれない。
幾千の日に比べれば刹那だろう。
それでも、幾千の夜離れていた分、刹那の時も無駄にはしたくなかった。

白紙に新しい筆をおくかのような想いで銀八は土方の内部に精を吐き出して、
小さな黒い頭を抱きしめたのだ。





そうして
銀八はひっそりと笑い、心の中でプロフィールを書き換える。



土方十四郎。
16歳、男性。

銀魂高校1年Z組。
所属・剣道部。
好きなもの・マヨネーズ。
成績・生活態度良好。




そして
特記事項・前世らしき記憶、及び一回り年上の恋人『坂田銀八』有り。


初めから、そこに書きこまれていながら、
初めは見ることの出来なかったその一文を
消えない心の筆でもう一度。




『from a beginning to a beginning』 了





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