うれゐや

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【シリーズ】 | ナノ

『4 years later』




やっと、ここまで辿り着いたよ。
あなたに追いついたよ。土方先生。


4月1日。
快晴。
私立銀魂高校。
4年前、俺はこの学校を卒業した。


「この春よりお世話になります坂田銀時です」
「まさか、あんたが教師になるなんてねぇ」
理事長室で着任の挨拶にいく。
勝手知ったる母校。
しかも目の前にいる理事長は亡き父母の知人にして、成人するまでの間、俺の後見人をしてくれた寺田綾乃。
挨拶の言葉を一度吐き出したなら、次の瞬間にはついゆるい表情に戻ってしまう。

「ここにどうしても戻ってこなけりゃならなかったからな。
 いやホント銀さん頑張ったわ」
「ま、社会人になったからには、容赦しないからね。しっかり働いてもらうよ」
「へいへい。わかってるって」

初日であるし、春休みということもあって同僚となる教員たちはほとんど学校に出てきていなかった。
私立高校であるから、よほど自己都合や定年退職しない限り、昨年の教育実習の頃とメンバーは変わっていないはずだ。
職場に慣れるという作業に不安はない。
案内もしてもらう必要さえないので、本格的な出勤は始業式の3日前と言い渡され職員室を出る。
この様子なら初任であるしクラスをいきなり任されるなんて荒療治もないだろう。
「では、また5日に」
ただ、一つだけ。
不安要素があるとしたら、今覗いた職員室に求める教師の姿がなかったこと。
携帯を鳴らそうと早々に校舎を後にした。


今年の桜の開花は早いらしく、恐らく入学式までは持たないかもしれない。
ゆっくりと、青い空に映える桜を眺めながら、校門へ向かう。


当時高3だった俺は担任教師に恋をした。

あなたしかいらない。
男同士であっても構わない。あなただから好きになった。
何度も伝える俺に
「お前の気持ちが嘘だとはいわねぇが、憧れからくる一過性のものだ」
あなたは言ったね。

「じゃあ、一過性のものでなければいいの?少しは考えてくれるってこと?」
揚げ足を取るようなことになってしまったけど、とにかく希望がほしかった俺。
あなたは、苦笑いしながら、長く細い紫煙を吐いて予想以上の約束をくれた。

「そん時はしかたねぇ。大学ちゃんと4年で卒業して、社会人になっても気持ちが変わらないなら、こんなオッサンで良ければくれてやるよ」

長い長い大学生活中、本当に不安だった。
自分の気持ちがぶれる心配はなかったけれど、あなたは?
しつこい生徒をあしらう為の方便?
いや、あの人の性格ではそんな器用なまねは出来ないとは思うけれど。
本当に待っていてくれる?

愛しいあの人の側にいる為、
本気を証明する為、
一人の男として認めてもらうため、
母校の教壇に立つ道を選んだ。
あなたの傍にいるために。

この4年の間、結婚したとも、付き合っている女性がいるとも聞かなかった。
ただ、幼い約束を口にすることはなかった。

あなたは約束を覚えてくれているだろうか?


携帯にあなたの番号を表示させたまま、迷う。

(ええい、ままよ)

通話ボタンを押した。



じりりりりん。

数秒の間の後、昔ながらの黒電話の着信音。

「え?」
なぜ、こんな近くで?

「銀時、いや坂田先生か…」
携帯からと生の声、二重になって聞こえてくる。
校門に背をもたれさせ、あなたが立っていた。

「就職おめでとう」
照れくさそうに、いつものようにタバコを咥え言う。

「せんせ…俺…」
「ん?」
「約束…覚えてる?」
「さぁ、なんか約束してたか?最近すっかりオッサンになって忘れっぽくなってな」

携帯灰皿にタバコを片付けて、ニヤリと笑った。
俺の好きなちょっと高慢で挑戦的な表情。

あぁ、覚えてくれてるんだ。
それって、最後の逃げ道のつもり?


「大丈夫、オッサンになっても綺麗だから。十四郎は」
やっと手に入れた。

腕の中にあなたを閉じ込めた。






『Never stop −after4years』 了




最後まで読んでくださいましてありがとうございました。

今回の回はエピローグ的な…
今後、高校3年の一学期から物語を展開させていく予定です。


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