うれゐや

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【短篇】 | ナノ

『the bittersweet taste U』




「じゃあ、そろそろ帰るぞ」

予告通り、とはいかなかったものの、午前9時には身支度を整え、土方は銀時にそう告げる。

「もう、ここに住んじまえばいいのに」
「四六時中、テメーと一緒だとかごめんだ」
布団の中から目だけ覗かせて仰ぎ見れば、マフラーの巻き方が気に入らなかったのか巻きなおしている姿が見えた。

「冷てぇの」
「冷たくて結構。そんなことじゃ長く続かねぇ」
「へ?」
何かおかしなことを言ったかと振り返った土方に対し、銀時は言葉を反芻する。
強気な発言や銀時を翻弄するような煽り文句は口にしても、己の心情を表すような言葉はなかなか吐きださない男の珍しいセリフだと。

「それってよ…」
「あんだよ?」
「それって俺と長くオツキアイしていくため、っつうか
 倦怠期知らずでいつでもいちゃいちゃらぶらぶな蜜月を続けたいってことで
 オーケー?」
むくりと起き上がれば、エアコンが入っているとはいえ、寒気が一気に襲いぶるりと震える。構わず、こんな顔をするからドSと呼ばれるのだろうと自覚のあるニヤリとした笑みを浮かべて恋人のマフラーの先を引張った。

「あ、阿呆かっ?!
 ど、どどこに誰と誰が、い、いちゃいちゃらぶらぶの要素があるってんだっ?
 まだ寝ぼけてんのか?寝ぼけてんだな!よし!そのまま息の根を止めて…」
「ちょ!オメーはどうしてそうバイオレンスかね?!
 俺はオメーの言葉を平たくわかりやすーく言い直しただけだろうがっ!」
「ふざけんなっ!ひとっことも言ってないからな!」
「このツンデレが!」
「ツンデレじゃ…」
傍から見ればじゃれるような会話を打ち切らせたのは、某マヨネーズ会社のテーマ曲だった。
土方の携帯電話は怒鳴りかけた声を押さえ、通話ボタンを押す。

「山崎か、なんだ?…え?先方の都合で一時間早くなった?
 んなことはさっさと連絡…メール?
 あ!あのエリート野郎がうるせぇからメールは全部センター預かりにしてた。
 あぁ、すぐそっち向かう」

大体内容を把握した銀時は通話中の土方に身振りで玄関で待てと合図してから、洗面所で軽く顔を洗うと手早く着替える。
そしてジャンパーと予備のメットを持って後を追った。

「送る」
「馬鹿。ニケツするわけいかねぇだろうが」
「馬鹿はオメーだ。俺のベスパの排気量は125cc。原付じゃないんですぅ」
それに舌打ちとヘルメットをもぎ取ることで返事としてつもりなのか、さっさと玄関を開けて階段を降り始め、銀時も後に続いたのだった。



「で、なんで坂田、テメーまでここにいる?」

土方を送り届けた銀時は『cafeSAMURAI』には退職した土方を『貸出』ているんだからとかなんとか恩に着せて、新企画の最終打ち合わせに入り込んでいた。

「だって、ゴリラがいいっていったもん」
「近藤さん!」

近藤は生来のおおらかな性格の為かすんなりと席を一つ増やしてくれ、あまつさえ茶菓子まで出してくれていた。

『cafeSAMURAI』は小売りのケーキから、ウェディング用の引き出物、ネット販売受注まで手広く請け負う洋菓子店。
コラボする『nobleness』は本店はイギリス、ヨーロッパ中心に店舗展開、都内に1店舗を置く、高級ティールーム。
それに対し、『café&barじゃすたうぇい』はパティシエ一人、バイトが二人、そしてオーナーの銀時自らも接客に加わる小規模な店だ。
経営規模は比べるべくもないとしても、商売仇と見なされても仕方がないと土方にしてみれば言いたいのだろう。

「日ごろ、トシがお世話になってるわけだし、
 今日はもう大詰めも大詰めの最終確認だけだから、別にオープンで問題ないだろ?」
「だが部外者は部外者だ。大体、『nobleness』さんが…」
あ、わざと店名でいいやがったと銀時は内心笑いながら、表面だけは敢えてやる気のないただ茶菓子をつまみにきたとばかりの態度を崩さない。

「別に私は構いませんよ。エリートのやることに抜かりはありませんから。
 見られて困るようなことは本当にありませんし。
 それに、トシにゃんの今の雇用主さんともお話ししたいと思っておりましたから」
「トシにゃん?」
そこで銀時は言葉を挟んだ。
聞きなれない、ひどく愛らしい呼称はどう考えても土方のものだと察することはたやすいが、どちらかと言えば仏頂面の(修行時代に付き合いが多少あったからか)敬語を使う努力を一切やめた柄の悪いしゃべり方の恋人には似つかわしくない。
第一似合うか似合わないか、それ以前の問題で恋人である銀時を差し置いて、そんな呼び方を目の前でされて面白いはずがなかった。

「トシにゃん、可愛いでしょ?
 土方さん、と他人行儀にお呼びするよりずっと親密ですし、これからも…」
「勝手にへんな愛称で呼ぶな!」
「まぁ、そうおっしゃらないで。メル友じゃないですか。
 それに言いましたでしょ?私あなたのファンなんです。
 まだまだ是非お仕事ご一緒したい、といいますか、坂田さん」
「あ゛?」

剣呑な返事しか出来ないのはどうしようもない。
佐々木と銀時は初日に挨拶に『じゃすたうぇい』に来た時以来だが、どうにもこのエリートであることを鼻にかけた男を好きになれそうにはなかった。
それに、挨拶と称した訪問は土方が『cafeSAMURAI』へ行った時間を見計らって行われ、且つ、気に食わない提案を落としてくれていたのだ。

「丁度良い、坂田さん。この間のお返事をいただければ有難いのですが」
「は?坂田?」
「先日、坂田さんとは一度お話ししているのですよ。
 土方さんの才能を一カフェで留めておくにはもったいないと思いませんか?とね。
 元々『cafeSAMURAI』とコラボしようと思いましたのも、高級感あふれる私どもの
 『nobleness』の店には足を運びにくい一般的な世帯世代にも
 広く一流の味を伝えたかったからですが、
 それ以上に土方さんの経営手腕には一目を置いていたからです。
 それなのに、ようやく企画が通り、いざ大詰めは私の手でとフランスから戻りましたら
 土方さんは退職。
 やはり土方さんあってのこの企画と打ちひしがれて企画自体を白紙にしようかと
 思っておりましたら、人の好い店長さんが骨を折ってくださって。
 あぁ、私、『じゃすたうぇい』さんで土方さんが作られるスィーツもいただきました。
 ですが、そちらの味は折角の土方さんの分析力を生かし切れていないし、
 個性が強すぎて、到底洗練されているとは言えないもの。
 どうです?坂田オーナーは無類の甘党だとお聞きしてますが、
 あれで土方さんの腕を活かし切れているとお思いですか?」
「佐々木!テメー…」

立ち上がろうとする土方の腕を銀時は引く。
挑発に乗るにはまだ早い。

「私は雇用主である坂田オーナーにお聞きしています。
 どうです?土方さんにはこちらで4月にオープンする『nobleness』2号店を
 お任せしたいと思っています。
 土方さんの代わりに一流のパティシエと宣伝スタッフご用意しますから、
 土方さんをお譲りください。けして悪い話ではないでしょう?」
「坂田、こいつは何言って…」

一度は強く掴んだ手のひらの力を抜いて、真横にある綺麗な顔を見つめた。
怒りのあまりに元々開き気味の動向が今は完全に開いてはいるが、冷静さを全て手放したわけではない。
だからこそ、銀時はあえて尋ねた。

「土方、佐々木の店に行く気があるか?」
「っ!坂田…本気か?」
「プライベートとお仕事、本当は分けたいんだろ?」
「それは…それは今関係ねぇだろうが!」

朝ベットサイドで交わした言葉であるだけに、土方は耳を赤くする。
その様子を愛でながらも、話を本筋に戻した。

「オメーの可能性を摘んでる自覚はある。あるけどよ。
 可能性=成功でも、成功=幸せでもねぇと思うから、俺はオメーの判断に任せてぇ」
「なんだよそれ…」
「最初、『SAMURAI』でオメーの作ってるもん食った時に、うまいけど
 『作りたいもの…作ってねぇのかな?』ってのが最初に感じたことだ。
 だから、オメーがウチの、俺とオメーの店にしかない味を作ることに楽しさだとか
 やりがいみてぇなもん感じてくれりゃって、思ったから強引に引き抜いたし、
 今でもオメーが納得がいくもん作れりゃいいって思ってる。
 けど、それは俺が思ってるだけのことで…」

さて、土方がどう答えるか。

正直なところ銀時には予想が付いていなかった。
腹いせに『nobleness』に移るという決断の可能性も、
案外、これを機に元々己が立ち上げたと自負する『cafeSAMURAI』に戻ると言い出す可能性も絶対にないとは言えない。
時折、常識人に見えて、突拍子もない行動を起こす男であるから大まかに3パターンは対策を考えての発言だった。

『恋人』という枠と、『パティシエ』という枠。
それを土方がどう内側で区別し、理解しているのか時折わからなくなる。
最初が強引すぎたからこそ、不安にもなった。

賭けだ。
賭けであり、銀時との関係をもう一度見直してもらうための、きっかけ。
どこまで踏み込んで良いかの。

負けるつもりはないから、手の内を全てまださらさない。



だが、緊張した耳に入ってきた土方の反応は銀時の思惑と多少どころかかなりずれたものであった。

「それか」
「あ?」
「それがテメーの口ん中がここんとこ苦かった理由か」

銀時は思わず口端を下げて、話の飛び具合にまさに苦々しい顔をし、ようやく状況が呑み込めてきたらしい近藤も三者を見比べて、最終的には親友でもある土方に声をかけた。

「トシ」
「大丈夫だ、近藤さん。
 大体よ、坂田、テメーらしくねぇ。迷ってんじゃねぇよ。
 あんだけ人のこと焚き付けておいて今更何言ってやがる?
 手放すつもりがねぇって言ってやがったのは撤回か?」
「いやいやいや銀さん、プライベートで別に土方を手放すつもりは今でもねぇよ!
 そっちじゃなくて『パティシエ』の土方の方な!」

仕事とプライベートを分けたがる土方は、今は仕事人としての立場で応えてくるとばかり思っていた。まして、近藤や元同僚、さらに佐々木のいる前だ。
まさかそんな風にひっくるめた形で帰ってくるとは思いもよらず、慌てふためいてしまったことが口惜しい。

「なら、しっかり両方握っとけ。んな情けねぇ面してっと、
 どっちも叩き斬って近藤さんのとこに戻るぞ」
改めて、自分の恋人は男前だなと感心半分、やはり天然に変化球は通用しないかと諦め半分になって肩を竦めてみせる。
さらに、次いで佐々木に向けられた言葉に口が開いてしまった。

「あー、この馬鹿が返事してなかったみてぇだが、佐々木さんよ」
「はい?」
「俺はアンタんとこみてーな上品なもんは作れねぇ。おべんちゃらはいい。
 俺を通して『SAMURAI』の経営ノウハウと足場が欲しいんだろうが?
 今回されたことに関しては、『SAMURAI』は『SAMURAI』でメリットがあったから
 コラボ企画にのったがよ、次いでとばかりに合併吸収だか潰そうとするための足場に
 しようなんざ、ちっと欲張り過ぎじゃねぇのか?」
「おや、心外な」
心外といいつつも、一向に驚いた風もなく、飄々とした態を崩さない佐々木に土方は構わず続ける。

「雑草は雑草で土の下に蔓延らせた根っこがあんだよ。情報網なめんな」
「土方さんのファンというのは嘘じゃありませんよ」
「嘘くせぇ。つうか迷惑だ」
「では更に親交を深めて信じていただけるようにまた、メールしますから
 新しいメアド教えてくださいね。あ、坂田さんも是非」
「「教えねぇよ!」」

そこから先はまぁまぁと近藤が、一斉に怒鳴った銀時と土方に腰を降ろす様に促し、珍しく低く重い声で話しに入った。

近藤は土方が慕うだけあって、お飾りの店長というわけでは決してない。
ここからは『cafeSAMURAI』と『nobleness』との契約に話を戻すと宣言した。
そのうえで土方の出番はここまでとさせてもらうこと、更には『cafeSAMURAI』はこれからも独自のスタイルを保つつもりであるから、『nobleness』の枠には到底おさまるはずはないということを理解していて欲しいと、宣戦布告とまではいかずともきっぱりと佐々木に釘を差したのである。




企画についてのみの話に集中させたならば、打ち合わせは短時間で片付き、あっけなく解散と相成った。
用が済めば長居をしたくはない銀時はやや強引に、だが、しっかりと問題のコラボ商品のサンプルをせしめて駐輪場へと向かった。

「しかし、土方、『nobleness』が『cafeSAMURAI』買収に動いてるの知ってたんだ?」
歩きながら、気になっていたことを尋ねてみた。

「誰が今まであそこの帳場動かしてたと思って…って、
 まさかテメー…知ってた上で佐々木の提案を受け入れるかどうか
 俺に選ばせようとしやがったのか?
 俺が『nobleness』選んでたらどうするつもりだったんだ?コラ」
「いや…その、まぁなんていうの?
 『nobleness』を選ぶ可能性は低いと思ってたってのもあるけど…その、な?」
銀時は銀時で、フリーで働いていた時に作り上げた馴染みや情報網があちらこちらにある。
『nobleness』の二号店出店の動きも、『cafeSAMURAI』の株価もそれらを通じて耳にし、知ってはいたのだ。

「あ゛ぁ?」
「怖いよ?土方くん。瞳孔開いてますけど?」
「白状しろ」
「え?あー、万が一にも行っちまっても土方君なら自分で『nobleness』内側から
 ぶっ潰そうとか考えそうだなーとか?」

『nobleness』の動きを知っていて、素知らぬふりをしたわけでは決してない。
知っていたからこそ、今回のような賭けをしてみてもいいかと思ったのだ。

『じゃすたうぇい』を選んでくれたなら、今まで通りかもしれないが、遠まわしに問題提起、そして流されたわけではなく土方自身が己の意志で残るのだと言質を取ることが出来る。
『cafeSAMURAI』を選んだなら、『パティシエ』としての土方は失うかもしれないが『恋人』は残る。ただし、意外に情に厚い、仁義を重んじる男であるから正直なところこの可能性も低いと読んではいた。

「大人しくしておく義理はねぇなぁ。けどよ。
 万が一そんなことになっていたとして、テメーは傍観決め込む気だったのかよ?」
「まぁ、そん時は…」
「そん時は?」

万が一にも『nobleness』を選ぶというどんでん返しが来たとしても『cafeSAMURAI』に害をもたらすとなれば容赦なく土方は動くだろう。
『nobleness』から自らの意思で離れれば、『恋人』の認識と『パティシエ』も全部一気に手に入る可能性があると考えていた。

「横槍と言われようが余計な事だって怒鳴られようが何だろうが何が何でも
 『nobleness』が生き残ろうが潰れてようが、オメーを、恋人のオメーも
 専属のパティシエもオメーもまとめて全部ひっくるめて捕まえに行きましたとも。
 そうでなくちゃ」
「そうでなくちゃ?」

答えを促しながら、土方は坂田の唇をぺろりと舐めた。
まるで、そこにクリームでも付いていたかのように何かを掬い取るかのように。

「そうでなくちゃ、『じゃすたうぇい』も俺も
 いつまでたっても休業中になっちまうでしょうが!コンチクショー」


どちらにしても、どちらも手放す気は端からないのだと知ったうえで明らかに銀時を煽ってくる土方の仕草に半ばやけっぱちに様に吐きだした。

どこまで、読まれているのか。
策士、策の溺れるとはこんなことを言うのだろうか。
出来レースのつもりが、ダークホースにしてやられた気分だ。

満足げに喉を鳴らして笑い、土方は銀時の両頬を挟み込み固定すると今度は深く唇を本格的に重ねた。

「よし!まだ、少し苦いが、ずいぶん甘くなってきた」
「オメーは…くそっ」

甘く、苦く。

複雑な味が両者の間を行き来する。

「オーナーの味だけが料理に反映されてると思うなよ」

混ざり合った両者の味。
それが、『じゃすたうぇいの』の味になる。
青灰色がそう語っていた。


ならば、定休日の午後。まだまだ時間はたっぷりだよなと銀時は笑ってみせるしかない。
察した土方はメットを放り投げてベスパの座面をポンポンと叩いて出発を急かす。

そうやって挑発的に笑うパティシエにオーナーはひっそりとため息をついた。
幸せで、それでいて少し不満の溜息を。

土方は『じゃすたうぇい』を選んだ。
そして先ほどの言葉は店の味は二人のものだと言ってくれたに等しいことを幸せだと思い、勝てないなという思いが少々。

「おい?」

怪訝そうに坂田のベスパに先に跨って、怪訝そうな声をあげる土方に改めて自分のことをどう思っているのか言葉で問いたくなったが黙って己もハンドルを握った。

「さてさて、最高の甘味を帰ったら喰わせてもらおうかね」
「馬鹿が。満足させんのはテメーだ」
「言ってくれるじゃねぇの。精々いい声で啼かせてやっから覚悟しとけコノヤロー」

エンジンをかければ背中側から腕が回されてきた。
それを合図に、スロットルを回して地面を蹴る。

「明日から、忙しくなりそうだな」

背中から回される腕と体温が、背中越しの声は少しくぐもってじんわりと銀時に伝わってきた。

明日からバレンタイン当日に向けて、既存のメニューに加え、チョコレートに重点をおいた商品展開が本格化する。
だが、それこそ小さな店舗だ。
予約は締め切っているから予測のつかない忙しさではない。
余裕があるなら、時間があるなら、

「なぁ…俺にもチョコ作ってくんねぇ?」

風が銀時の声を掻き消した。

「あ?何か言ったか?」
「なにも言ってねぇ」

掻き消されることを前提にした言葉であったからもう繰り返しはしない。

本当は土方の全部が欲しい。

そう欲張ってしまう相手だからこそ、やはり『商品』のチョコだけではない坂田自身だけにむけられたチョコ、なんてものも欲しくなる。
結局曖昧にされた言葉の代わりにせめて。

けれども、恐らく考え付きもしていないだろうなとも思う。

一気に加速した銀色のベスパは颯爽と2月の町を我が家にむけて駆け抜けていった。





この年のバレンタインデー。
夜、一部の常連数組にのみ試作品だと『じゃすたうぇい』のパティシエは予定外のメニューを提供し、感想を求めたという。

定番フォンダンショコラ。

定番でありつつ、スポンジ部分はひどく甘く、代わりに中から蕩けだすショコラはとびきり苦みの効いたビターテイスト、さらには強いアルコールの風味。

突発的であり、オーナーすらイートインに出していたことを知らなかった限定すぎるその一品。

試作品であのレベルなら完成品は?

その菓子がもたらしたほろ酔いとほろ苦さが絶妙だったと口コミで広まり、商品化しないのかと問い合わせが後日鳴り響いたという。

だが、オーナーは『商品』ではないからと断り続け、二度とメニューに載ることはなかった。




『the bittersweet taste』 了 


 

 HappyValentine!





2014/10/26

※ブラックホース→ダークホース

管理人のミスです。
お詫びのうえ訂正させていただきました。
ご指摘ありがとうございましたm(__)m




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