『手紙』基本銀土前提ですが、土方でてきません。 銀さん独白ですので、ご了承ください。 拝啓 松陽先生 暑中お見舞い申し上げます。 いや、お盆に入っているから、残暑お見舞いなのでしょうか。 先生がいなくなって、ずいぶんと時間が経ってしまいました。 あの頃、一緒に走った奴らとも、歩む道が分かれ、今では「万事屋」なんて商売で身を立てています。 江戸に流れ着いたころは、一人でなんとなく漂うような浮浪者のような生活をしていましたが、 ババアに拾われ、風向きが少しずつ変わってきました。 ババアは寺田綾乃というのですが、スナックお登勢を経営し、かぶき町四天王なんて呼ばれる列女です。 もういい年なので、先生に近い将来会わせることが出来るかもしれませんね。 今では、アイドルオタクのダめがねと大食い戦闘民族のチャイナ娘の二人の従業員とともに日々をにぎやかに過ごしています。 護ることが出来ないなら、護るものを作らない。 そんなことを考えていた時期もありましたが、いつの間にやら、人の輪は広がっていっています。 生きているということはそういうことなのかな、なんて、柄にもないことを思う今日この頃です。 そういえば、拾われてすぐの頃だったでしょうか? 先生は、きっと自分にも大切に思う唯一人が現れますよとおっしゃったように思います。 あの時は、こんな異質な自分に自信なんてなく、また作る気自体もなかったのですが、メガネ(新八)には爛れた恋愛なんて揶揄されてましたが) とうとう、俺にも想う人が出来ました。 彼は、俺が護ろうなんてことを、口に出せば、怒り狂うことでしょう。 強い矜持を持ち、自分の足で、立つ彼。 喧嘩早く、いつもアドレナリン出しまくって、瞳孔を開かせ、江戸の町を、真選組を守ることに全力をつくす彼。 護る、のではなく、共に立つ、のでもなく。 でも、底のところに彼には居てほしいと願ってしまうのです。 笑われるでしょうか? もしも今の俺をご覧になったならば… では、近状のご報告はこれにて。 この手紙が、無事先生に届きますように。 それではまた…。 敬具 銀時 そこまで、書いて、万事屋の主人は筆をおいた。 ざっと、独白のような文を読み返す。 そして、あて名も書かれていない封筒にそっと挿入した。 「銀さ〜ん。用意できましたぁ?」 玄関先から、新八の声が聞こえる。 「おぅ。ババア支度済んだって?」 手紙を懐に押入れ、玄関へとむかう。 今日は、お登勢が、精霊流しをするから、手伝えと言ってきていた。 神楽も地球に来て初めての行事らしく、朝から1階に入り浸りだ。 薄い板の上に蝋燭を立てて、風に消えぬように都鳥の形に切った紙の覆いをかけて、河に流す。 夏の行事。 そのうちの一つにこの手紙を託してみよう。 「暑中お見舞い申上げます」 川を流れる無数の明かりに、そっと呟いた。 『手紙』 了 皆様、残暑お見舞い申上げますm(__)m (14/85) 前へ* 短篇目次 #次へ栞を挟む |