07/21(Mon):SSS『独り遊び』(7/21) 坂田銀時は深く、重たいため息をついて、頭を抱えていた。 大変不本意なことに、下ネタ生産機だとか、爛れた大人だとか、脳が下半身だとか、 そんな大変不本意な評価を受ける坂田銀時ではあるが、実のところ、発言程には「シモ」の事情に精通しているわけでも、ドキツイSMプレイが好きなわけでも、ナースにこだわりがあるわけでも、ない。 勿論、二十数年の人生経験がないわけではない。 ただ、口ほどには、というだけであって、チェリーでもなければ、それなりの経験も勿論ある。 「うん…ズルむけボーイだよ。うんギンさんのギンさんはね」 主以外いない万事屋で、誰に言うともなく息子の名誉を護ってみる。 重たいため息の理由は勃起不全だとか、枯れ果てて、長谷川に借りたAVに反応しなかったことではない。 勃つ。 むしろ勃つことが今は問題だった。 銀時は発言ほどには爛れていないどころか、性欲という意味では比較的薄い方なのだ。 そうでなければ、10代の少女と共に暮らしてなぞいられるはずも無い。 いわゆるオナニーという行為は、銀時のような生活の者にとって面倒な作業だ。 風呂場ですれば、排水溝の掃除が面倒であるし、一つしかない厠に籠っても、バタバタと賑やかな万事屋で落ち着いて致せるほど神経も太くはない。 神楽と新八の留守が重なり、かつその時間がそれなりの長さ有る、というようなタイミング、完全に一人になれる時間は意外に少ないのだ。 かといって、プロのオネエサンにお願いするには先立つものも必要になる。 それでも、これまで別段、銀時はそれを困ったと思ったことはなかった。 健全な成人男性であるから、それなりに溜まってくれば吐き出したくはなる。 吐き出したくはなるが、吐き出せなかったからと言って病になるわけでもない。 一定時間をやり過ごせば、なんとかなるものなのだ。 「いい加減、勘弁してくれや。ブラザー」 なのに、今抱えた頭の下で銀時の中心は熱を帯び、膨張し続けている。 AVを見たわけでもない。 年齢制限のあるような雑誌を読んだわけではもない。 怪しげな薬をうっかり飲んだ、なんて現実離れした設定でも決してない。 うっかり、先日定食屋で気持ちの悪い黄色い物体の乗った犬の餌を食べている男を見かけたことを、その男の口端についたテラテラとした油の塊を思い出しただけだ。 それを美味そうに舐めた赤い舌を思い出しただけだ。 それだけだ。 かつ丼らしい物体をリスの頬袋のようにして懸命に頬張る男は銀時の視線に気が付くといつも通りの瞳孔の開いた瞳で睨んでくる。 人相の悪いその顔を思い出して、またズクリと腹の奥が疼いた。 素数を数えてやり過ごそうとして既に10回失敗し、ジャンプを3度音読しおえて尚、おさまらない熱。 時計に目を向け、神楽と新八が戻ってくる時間を計算する。 あと15分、遅くとも30分以内に戻ってくるだろう。 「くそったれ…」 せめて、AVでも見ながらなら誤魔化しようがあるかもしれないが、それほどの時間はない。 確実に、今致せば、オカズにしてしまう。 あの物騒な武装警察の、チンピラ、ニコマヨ中毒を。 土方十四郎という男を。 ジジ…っとファスナーを引き下ろして、前を寛げると鎌首を擡げた自身が姿を見せた。 目の当たりにすれば、もうため息は鬱蒼としたものというべきなのか、ただ体内の熱を口からも吐き出したい結果なのか己でも判別つかなくなり始めていた。 「もうどうにでもなりやがれ…」 ゆるりと手を上下に動かし始め、目を固く閉じる。 瞼の裏に変わることなく映り続ける映像に絶望と、そしてかなりの興奮を受け取りながら。 『独り遊び』 了 お粗末さまでしたm(__)m prev|TOP|next |