うれゐや

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06/09(Mon):SSS『距離』(ぱっつち)




土曜なのに研修。
本来、土方は休みの予定だったのであるが、参加予定の人間に不幸があったということでお鉢が回ってきたのだ。

業務に必要であることにしろ、直接関係ないことにしろ、自分の血肉になる知識になるのであるから、研修自体には不満はない。
不満はないが、と土方は意味もなくシャーペンの芯をかちかちを出してはひっこめ、出してはひっこめしながらプロジェクターに映し出された資料を眺める。

今年度に入ってから、けして大きくはないものの細々としたトラブルが続き、休日出勤が続いていた。
土方の誕生日のあったGWも同様だ。
社会人になって2年目。
誕生日パーティ、という歳でもないが、折角卒業してから手が届いた恋人に会うぐらいのことがしたいと思うのは贅沢なことだろうか。
机の上に置いた携帯のスケジュールアプリをこっそり開きながら、小さくため息をつく。

結局、恩師でもあり恋人である坂田銀八が3月の春休みを使って泊りに来て以来顔を見ていない。
メールと電話での短い会話のみ。
今日、ようやく土日をつかって地元に戻るつもりでいたために、その失望は大きい。

夕べ戻れなくなったことを伝えたメール。
仕事なら仕方ないけど、無理するなよと一言だけの返信。

メールの画面から新幹線の時刻表に画面を切り替え、研修室の時計を睨み付ける。

終了予定時間は16:30。
会場から自宅まで40分。
明日の着替えを詰め込んで、いや、荷物は戻ってからどうにでもなるかと思い直し、スーツを着替える時間だけはじき出す。
駅まで自転車で10分。
新幹線接続駅までをトータルして乗れそうなものを選び出す。

移動途中に、坂田に電話かメール。
それともいきなりアパートの呼び鈴を鳴らして驚かせるべきか。

明日昼過ぎにはまた戻る、そんなトンボ返り。
月曜からの勤務を考えれば体力的には厳しいかもしれないが、なんとかなる、とシャーペンで資料の隅に書きだしたタイムスケジュールにぐるぐると丸をつけた。

早く終わってくれ。

何度も何度もシュミレーションを頭の中で繰り返す土方の耳には講師の声はもはや聞こえてはいなかった。





お粗末さまでした!

オチとしては慌てて戻った土方くんのアパートに坂田先生がすでに待ち伏せしていたらいいと思います…
(そして、空き巣を間違われて、玄関に防犯用に置いてある竹刀で殴られかける…)


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