付き合い始めた時のドキドキなんて、いつかの着続けたお気に入りのワンピースと一緒にダンボールにしまっていた。そしてそのワンピースの存在なんてすっかり忘れてしまっていた私は、約三年ぶりに、あのワンピースを発見してしまい、とても甘酸っぱい気持ちでいる。

「あ!」
「なに急に大きな声出して」
「そういえば一昨日は私たちの四年記念日だったんだよ」
「なあんだ、そんなこと」
「…まあ、そんなことだけど、」
「そんなことより、さ、なんか僕、今エッチしたい気分」
「…ちょっと渚」
「したくない?」

本当に渚はズルい。私の弱い、自分の可愛く見える角度とか声とかを知り得ている。そのくせ、男の子の身体と力も出してくるから、やっぱりズルい。あーあ、今日は恋人らしいこと、してみたかったのになあ。四年も付き合っていたらお互いのことは大体わかっているし、余裕だってもうある。付き合い始めたあの頃の感情なんて感じることの方がもう少なくなってしまった。でも私はこの前、ドキドキワクワクソワソワが詰まったあのワンピースを見つけたのだ。その頃の気持ちを味わいたいのだ。いつものようにセックスだけじゃ今日は嫌で、

「ねえ、なに考えてるの?」
「な、にも」
「嘘つき。教えないともう止めちゃうよ」
「…渚が止めれるの」
「…生意気だなあ」

行為が一通り済んで、渚が顔を覗かせる。ねえ、さっきは本当になに考えてたのって。もっと渚と初々しい気持ちを共有したいなんて、なんだか今さら恥ずかしくて言えない。

「あっ、そういえばさっき四年記念日だって言ったよね」
「うん」
「僕今でも覚えてるよ。一緒に夏祭り行った後に告白したんだよね」
「私の家の近くの公園でね」
「うん。僕、柄にもなく緊張しちゃってたんだよね。君があんまりにも可愛いワンピース着てたから」

すっごく似合ってたよ。なんて。突然の昔話と甘い言葉に顔の火照りが引かない。なになに渚さん、急にどうしたの。

「今年も夏祭り、行きたいな」
「私も行きたい」
「あのワンピース着てきてよ」
「ええ、それは…」
「…僕が告白しなかったら、今みたいな約束もないんだね」
「渚が告白しなかったら私がしてるよ、多分」
「そうかもね」

目があって笑ってキスをした。私も余裕ができすぎて気付かなかっただけで、時間の経過なんて関係ないくらい、今でも彼からドキドキもワクワクもソワソワもたくさんもらっていたんだ。
今年の夏祭りはなんだか今までよりも緊張している。お母さんに、浴衣を出してもらおうかなあ。渚にまた、可愛いって思ってほしいし、また、思い出話をしたいからね。嬉しさと楽しさがこみ上げて緩むくちびるに彼のくちびるがまた重なった。



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