「あーーーーー寒いーーー」
「うるせェ」

ポケットからマスクを取り出して最後の防寒対策。少し蒸れてしまうがしょうがない。だって、寒いんだもの。
隣の蜂蜜色した頭の男もガチガチと震えていた。そりゃ寒いよねあんたも。でも私の方が寒いんだ、色々と。

「…そういやどうだったんでィ、自己採の結果は」
「んー…、まあまあ。沖田は?」
「オレも」

本当はまあまあなんかじゃない。とっても、夢だと思いたいくらい、自己採点の結果は現実だったのだ。一週間前まで頭の中にあった受験校を変えなくては行けなくなった。多分、私はここを出なければならない。地元の大学には行けない。あいつと、沖田と、一緒の大学に行けない。
最初は地元じゃないところだった。でも沖田の目指す大学にも私の希望する学部があるって知って、少し背伸びして、私はセンター試験の日まで勉強をしていたのだ。

「……沖田とお別れも近いでござる」
「しくじったのか、センター」
「…まあ元から高めの設定だったし。身の丈に合った大学に行くよ」

沖田は返事をしなかった。その代わり頭を叩かれた。じんわりと涙が出てきた。鼻も痒いし痛い。これ以上ばかになったらどうするのさ、そう言えば今以上ばかになってどうするんでィと返された。

「どうなるのかな私たち」

沖田は知らない。私がどれだけ沖田を好きか。私たちは友達から何となく恋人になったけれど、でも、私は今ではとても沖田が好きで、離れたくなんかなくて、沖田が隣にいないなんて信じられなくて。

「さァ」
「さァ、って…」
「そんな未来のことなんか俺にはわかりやせん」
「…」
「俺とあんたが、その時、居たい人といればいいんでィ」

友達は言う、遠距離恋愛なんて続かないよ、と。大人は言う、まだまだ若いわね、子どもの恋ね、と。それでも私たちは、今、全力で恋をしている。愛を知ろうとしている。

「今、沖田は私と居たいの?」
「なに自惚れてんだ」

自然と笑っていたことに気付いた。泣いたり笑ったり、そんなくるくる変わる感情を見ててほしい。手を伸ばしたら今みたいに返ってきてほしい。
ねえ、沖田、すきだよ。ありったけの今の気持ちを後悔しないように伝えよう。




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