「心臓を捧げた私達が恋愛しているのは可笑しな話だよね」

急にどうしたの。とアルミン・アルレルトは読んでいた本を音を立てて閉じた。

「僕達は人間だから恋愛をしたくてするんじゃない。本能でしてしまうんだよ」
「うーん、でも」
「可笑しなところ、あるかな。僕と別れたいなら話は別だけど」
「ち、違うの。ただ、こんな浮ついてていいのかなって思っただけ」

私達には明日どころか数時間後の命さえ保証されていない。それを悲嘆している訳ではなくて(何故なら自ら兵士となる道を選んだのだから)、何というか、死んでいく仲間を横目に、自分なんかが生きていること、その理由がアルミンと一日でも生きていたいからなんて、愚かすぎるのではないだろうか。人類に貢献したいからという気持ちもあるが、それ以上に恋慕が膨れ上がっている。終えた任務でまた仲間が死んで、死んで、死んで。もう涙なんか出なくなって。唯、自分と、アルミンが生きていることに安堵する日々なんだ。

「君は唯巨人だけを殺したいの」
「それは、違う。人類のために、未来に貢献したい」
「うん。それに恋愛は全くの別物だし、さっきも言ったけど恋愛は本能だからしょうがないんじゃないかな」
「でも、心臓を、」
「じゃあこんな話はどう。心は心臓じゃなくて、脳にあるという説があるんだ。」
だから心臓を捧げても、君は君の気持ちを持っていて。それは絶望でも希望に縋ってても、悲しみに裂けそうでも、僕を愛していても、大切にして。

いつの間にか隣に座っていて、アルミンの碧の瞳がとても近かった。その色がとても好きで、私はいつでもその瞳を見ると落ち着くことができた。愚かだという気持ちはやはり拭うことはできないけれど、でも、彼の言うとおり心臓を捧げても私の気持ちは捧げなくて良いのかもしれない。私は私として、兵士として、生きても良いのかもしれない。

「どう、少しは落ち着いた」
「うん。アルミンさすがだね」
「じゃあお礼をひとつ貰ってもいいかな」
「なになに」
「心臓以外の君を僕にくれないかな」




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