君の匂いが鼻を掠めて、重たい瞼を少しあげる。ぼんやりと霞んだ視界の中に、きらきらと輝く君の色が見えて、私はとても幸せな気持ちになる。君に会えるなんて、私は最後まで幸せものだなあ。

どんな出会いだったか忘れてしまったけれど、君が私と居てくれることを選んだ十五年間は、本当に幸せでした。君と幾度となく散歩した道は今でもはっきり思い出せるし、君の手の温もりはとびっきり温かくて優しかった。大好きで大好きで、いつも君に飛びついていた気がするよ。
君が家を出る時にした二つの約束。君の家族を守ること。そして、君が帰って来た時には目一杯大好きを伝え合うこと。身体の自由が効かない今、果たせているかは微妙だけれど、君のことは、いつでも、どんな時でも大好きだよ。

すごく瞼が重いよ。君が帰ってきたのに。近くにある手のひらに頬を寄せてペロリと舐めた。なんだかいつもと違って、塩っ辛い。どうしたんだろう。私専用のふかふかの黄色のソファに座っているのに、雨が降ってくるよ。どうしてかなあ。まだまだこの世界にはわからないことだらけだね。もっと、色々なことを知りたいし、君や君の家族と散歩をしたり、遊びたかったなあ。

でも幸せなんだ。君の匂いに包まれて。大好きだよ、ずっとずっと。君の愛の言葉で私は私として生きることができたよ。声が出ないけれど、最後になるって何となくわかっているから、ふり絞るよ。君が大好きだよ。

ワン。




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