その笑みの先には私が
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彼は綺麗な顔をしている、整った顔立ちに、薄い唇。

緑色の瞳が細まって、頬が緩んだその時は、きっともう死んでもいいかも。

なんて、そんな気持ちになってみたり。

そんな顔は見たことないし、

きっと彼は心を許した人にしかそんな無防備な顔は見せないのだろう。

でもそんな彼を目で追ってしまうのが、なんだか日課になっていた。

一度でいいから、そんな笑みが私に向けられたらいいのに。

特に親しいわけでもないし、話したこともないけれど、なんだかそう思ってしまった。

ふいに彼の視線が動くと、ゆっくりとこちらを向いた。

「…、」

目が、合ってしまった……

このまま逸らすのもなんだかもったいない気がしてならない。

「…何か用か?」

「あっ…いや…な、なんでもないです…」

彼の声が初めて私に問いかけられた、それだけで舞い上がる自分が止められそうにない

自然と頬が緩んでしまうが、今はそれを必死に抑えて、視線を逸らした。

始めての感覚、高鳴る心臓、


私は彼のこと、大好きみたい。




***





「どうした…?」

「え、なに…?」

ぼーっとしていた視界にクラサメの姿がうつる。

なんだか毎日見てきた彼の顔が今はすごく新鮮なもののように見える。

「ぼーっとしていただろ…?」

「あ、うん…ごめん」

そう答えて、彼の顔をじーっと見つめているとクラサメは少し可笑しそうに笑う

「なに…?」

「いや、昔もそんな風に見つめられていたな、と」

「……」

気づかれていた、なんだか恥ずかしくなってくる気持ちを抑えて、

視線を逸らすと、手に暖かいクラサメの手が絡んできた、

指と指の間に絡ませてしっかりと握り返すと、近くにクラサメの顔は合った。

そして優しげに緩む彼の顔、相変わらずそんな表情で見つめられれば心臓がうるさくなるけれど、

心地よい感覚が包んでくれる、

いつのまにか傍にいるようになった私たち、

「ねぇ…私に、心を許してくれる…?」

私よりずっと背の高い彼を見上げれば、変わらぬ笑みだった。

彼に詰め寄られれば、いつのまにか後ろには壁があった、

ちょうど私の顔の横に手をついた彼の顔がぐっと近づくと、

唇が触れるか触れないかの距離で、小さく呟かれた。


「当たり前だろ、」

そして触れ合う柔らかい唇、唇が離れれば緑色の綺麗な瞳を見つめた、

そして腰に回っていた彼の手をもう一度握って、

背伸びをして、軽くクラサメの唇に触れた。

少し驚いたように瞳を開いたクラサメはすぐに柔らかい表情で、

もう一度触れ合った。








     



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