痛い
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「なに…?」

目の前で私を見つめる彼は瞳を細めると、

低い声で

「…いや、」

そう言った。

私は彼が嫌いだ、

候補生だった時からの付き合いだったが

そんなに仲がいいわけでもなく、

なんとなく一緒にいることが多かった。

彼はとても強くて、

私がどんなに努力しても

全然届かなかった。

だが、四天王と呼ばれていた彼ももう26

魔力などほとんど残ってなくて、

0組の指揮官として働いている。


でもいつもなんとなく一緒にいる彼が嫌いだ


何年かたった今でも私の方が負けている

私の方はなぜか魔力がま残っていた。

なのに、


そんな私は0組の副指揮官



いつになったら彼に追いつくんだろう

追い抜かしたら、

何があるのだろう。

私は一体何を求めているの。


そんな彼は最近私を見つめて、

瞳を細める事が多くなった。

それがなんだか嫌で、

思い切って本人に聞いてみると、

答えにならない返事が帰ってきた。

呆れた。


「あ、っそ…」

そのまま彼の横を通り過ぎると、

なんだか胸が傷んだ気がした。


「ね、NO NAME」

「なに?」

「いい加減教えてよ、貴方とクラサメって…」

「だからー、違うってば。」

こんな質問を何回されたか、

親友のエミナにまで勘違いされたまま。


だから嫌なんだ。


一緒にいるだけ、

何も話さないし、彼は空気。

そう、私も彼にとっての空気なんだ。



じゃあ、なんで一緒にいるの…。

ま、いいや。



なんだか答えを出すのが恐い。

だって、何かが壊れてしまいそうだから。




「NO NAME、今日からお前は0組の指揮官だ」

「どうしてですか、」

「クラサメはルシの支援に行ってもらう」

上の言葉は軽かった。

多くの生徒たちを連れて、

ルシの支援をする。


………バカげてる



そこまでして、この国に価値はあったのだろうか






「クラサメ」

廊下で偶然あったクラサメに声をかけると

彼は小さく笑ったような気がした。


なんだか私が声をかけるのを待っていたような

そんな気がした。


「ねぇ、逃げちゃえば」


私の口から出た言葉は意外だった。

逃げる…?

どこに、


「支援なんて無駄だよ」

「いや」


やっぱり彼の回答は予想通りだった。

知ってる

彼はこの国が好きだと

この国に生まれたことを誇りに思っていること


分かっていた回答が、

なんだか胸を締め付けたような、気がした


「……じゃあ死ぬんだ」

「朱雀のために」

「そう」


ずっと一緒にいた彼はもうすぐ死ぬ

私の記憶からなくなって、

これからは一人になる。


クラサメの横を通り過ぎようとすると

声が聞こえた。


「指揮官だってな、おめでとう」


ふいに聞こえた声に足を止めたが、

彼は足を進めて、反対方向に歩いていってしまった。


なんだか、

変だよ、



ずっと待ちこがれてきたような


そんな言葉だ。




そう、私は彼に勝てたんだ

もう追いかける必要もないし、

努力する必要もない。


私は彼に勝つために頑張ってきたんだよね…?




追いついてしまったら


何があるの…?


本当は何が欲しかったの?




「………クラサメ、」


















ねぇ痛いよ、何もかも



(もう思い出せない彼、一体誰を求めて私はここまで来たんだろう)


     



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