0101 1/1 「……言うならさっさと言えばいいのに」 「……簡単に言うなよ」 「はぁ、クラウドって本当に…はぁッ。まぁ分からないでもないけど」 カウンター越しのティファの呆れたような表情に反論する言葉も出ない。 分かっている。今自分が抱えている問題は自分が自ら行動するしか解決策はない。 今手の中でにぎっている小さな誓いの証はずっと前からこの手の中にある。 中々行動できない自分にティファはいろいろと相談にのってくれたのだが、 もうこれで二週間目。簡単にできない決断とわかってはいたが、 とうとうティファも自分のうじうじとした感情に呆れたようだ。 「もう、自分がそうしたい思ったんだからすぐ言えると思うけど、NO NAMEだって断るわけないでしょう?」 「……、」 それが怖い。きっとあいつは断ることはしないが、誰にだってタイミングというものがある。 もしそれがあいつにとって悪いタイミングだったとしたら、 この思いを押し付けることになる。それが嫌なんだが。 早く言ってしまいたい衝動にも駆られるが、それを抑えるものも強情だった。 「そういえば、NO NAME今日病院行くみたいだけど知ってる?」 「は?!」 そんなこと知らない。なにかあったのかとティファを見れば、ティファは瞬きして笑った。 「お腹痛いみたいだったけど、本人は食べ過ぎとかなんか言ってたわよ?知らなかったんだ」 クラウドに心配かけたくないのかもね。そう言って笑顔を浮かべるティファだったが、 胸の中はあいつのことでいっぱいになっていた。 「NO NAMEは?」 「朝、出て行ったわよ、ついでに病院にも寄ってくると思うけど」 それになんだか納まらない気持ちがあり、深くため息をついた。 「…クラウド、心配性ね。わかるけど」 「うるさい、心配なんかしてない」 「してるわよ。ため息ばっかり」 「……あいつには言うなよ」 「素直じゃないなあ、二人とも」 素直じゃないのは知ってる。俺もあいつも強情で自分勝手だ。 でもどうしようもなく惹かれている。喧嘩ばかりの俺たちだったが、 離れる事なんかできないぐらいに、距離は近い。 手元にあったコーヒーを飲もうとしたとき、店の扉が勢いよく開いた。 「クラウドッ!」 それと同時に響いたNO NAMEの声に席を立つと、そこには焦ったような、それでもどことなく嬉しそうな表情をしているNO NAMEの姿があった。 顔を見るなりさっきまでの思いが一気に吹き飛んだ。 ため込んだ思いが嘘のようにすっきりしていく。 「クラウドわたし、」 NO NAMEがそういう前に自分の口は開いた。 「NO NAMEっ、結婚してくれ」 手を握って言った言葉と、そっと忍ばせた誓いの証にびっくりしていたNO NAMEは 瞬きする瞳からふいに涙がこぼれた。 「うんっ」 予想外ではないその答えだったが心底安心して、 嬉しい思いがあった。 そしてその次に聞こえた言葉に目を見開くことになるとは思いもしなかった。 それは強情な思いの欠片 (に、妊娠したっ) |