君のため
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「なんでお前なんだよッ!!!」

俺の前で、

ただ笑みを浮かべる、

愛しい人。

「…燐、私は貴方が大好き」

「…嘘だッ…」

俺は、目の前の女をどうしようもなく好きだった。

通じあえた、

一つになれた、

「…嘘じゃない」

そう微笑みを浮かべた瞬間、

白い肌から黒い紋章が浮かび出し、

栗色の髪は赤色に変化する。

そして、口元から見える牙が、俺を見て笑う。

嘘だ、

なんで…。

「さぁ、私を殺して」

「…ッ…」

悪魔、

NO NAMEは悪魔。

今まで俺を騙していた。

人を殺す悪魔。


「貴方は祓魔師でしょう?」


静かに響いた声は、

震える俺の腕を動かす。

背負っていた刀を、抜くと、

俺の周りを青い炎が囲む。

あぁ、俺も悪魔…、


「私を殺して。」


静かに瞳を閉じた、NO NAME。

視界がぼやける、


俺にできるわけがない、

だって、俺も悪魔で、

NO NAMEと同じなのだから。


「燐」


NO NAMEの言葉が俺をせかす、

ゆっくりと構えた刀。


瞬間に頭を過ぎったいままでの思い出、

一緒に過ごした日々。

お前の笑顔、



「……燐」


さっきとは違う低い声で発せられた俺の名前、

その瞬間、体が燃えるように熱くなった。


「ぅ…ぁ」

口の中で広がる鉄の味に、

体がゆっくりと倒れる。

それを支えたNO NAME。


「…燐、死なないで」


俺を支えるNO NAMEの手は、

真っ赤な俺の血で濡れている。


よくそんなことがいえるな、


「なぁ、お前…俺への気持ちも…嘘、だったのかよ…ッ」

苦しくなる息と、

だんだん薄れていく意識、

俺の目標は叶いそうにない。

サタンをぶん殴るのも、

叶いそうにない。



「…言ったでしょう、私は貴方が大好き」

「…は…そ、っか」


そのまま、ゆっくりと閉じる


狭くなる視界の中。


NO NAMEは笑っていた。



俺は死ぬ、

NO NAMEの手で。




俺はNO NAMEを殺せなかった、




俺はNO NAMEが好きだった。




どうしようもない想いで、




お前を殺すことなんか、


できるわけねぇ。




嗚呼、全て分かっていなんだよな




NO NAME、


嘘でも、最後まで俺を愛してくれた、



ああ、愛しい人。




君のためなら死ねる


END

     





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