さよなら
1/1


「なに、を……」

愛しい兄弟のかすれた冷たい声が、

そぐ傍で聞こえた。

ナイフを持った、手が

震える。

そのまま、突き刺したナイフを離せば

手が、赤に染まっていた。

「……っ…」

目の前で、燐が胸に刺さったナイフを抜いて、

地面に膝をつくのを、

ただ、呆然と眺めていた。


「……り、燐」


名前を呼べば、汗をかきながら、

私を見上げた燐。

その表情は、驚きに満ちていた。


「貴方は、悪魔…っ…」

「…そ、うだ…俺は、悪魔だ」


悪魔。


父さんを殺した、憎い悪魔が、


愛しい兄弟の燐。



「私たちは、本当の兄弟なのに…」


父さんを奪った悪魔が憎くて仕方なかった


今まで、私に隠して

隣で笑っていた貴方が憎い。


「…俺は、ジジィを殺してなんかいない」

「……」


ボタボタとこぼれ落ちる、

貴方の血。

その血は父さんと繋がっていないんでしょう?

私も、貴方も。


昔から、父さんは燐を守ってきた、


それなのに、


貴方は悪魔なの。


「貴方が、悪魔、だからっ…」


私は貴方が大好きだった、

兄として、

大切な存在として。


「なぁNO NAME…お前、ジジィが大好きだったんだろう…っ…?」


苦しそうに、声を出す燐。


私は、貴方にナイフを刺した。


父さんを奪った悪魔が憎かったから。


「…ジジィも、お前が好きだった…本当の、娘として…!!」

「…父さんっ」

いつも、

一緒にいて、助けてくれた父さん。

私は、罪を犯しました。

とても償いないような罪、



「…忘れんなっ…お前は、一人じゃねぇんだ…っ…」


そのまま地面に倒れ込んだ燐。

燐を抱き上げて、

抱きしめた。


もう身体は冷たくて、

動かない。




私は、大切な人を殺してしまった。




「…あぁ、悪魔と同じことをしてしまった…っ」

父さんを奪った悪魔。

燐を奪った私は、


悪魔になる。





近くに投げ捨てられた、


私と同じ血が流れる燐の血がついたナイフ


拾い上げて、



一言。






「ごめんなさい、」












みんな


さよなら


END

     





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -