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ただいま
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いつか貴方は言ったわ、


君が笑っていればそれでいいと。




「NO NAMEの笑顔、俺、大好きなんだ」

「…なんで?」

「君が笑うだけで俺は幸せな気持ちになれるから」


嘘よ。

だって、ノーバディには心なんて存在しないわ。

貴方にも、

私にも、

心なんてないのよ。


…わかってるのに、なんで

そんなこと、いうの?


「なぁNO NAME。俺がもしいなくなっても、
君は君のままでいると、
笑っていると、
約束してくれる?」

「なに、言ってるの?」

いつもり少し表情は切なげで、

夕日に照らされた貴方は輝いていた。

「しないわ。」

全てが壊れるように、

ガラスの玉がはじけ飛ぶように。

何かが壊れた気がした。




「だって、私はノーバディだもの。
貴方も、ノーバディでしょ」


いつも笑ってろ?

敵を騙すだけの笑顔に価値なんかないわ。

何も思ってないの、

思えないの、


ずっと前に無くしたモノは取り戻せない。

それでも彼は微笑んでいた。


“君は、約束してくれる”


そう言って、笑っていた。












そうよ、貴方は…いなくなったわ。

いつも傍にいたのに、

初めて会った時から、なぜだかずっと傍にいたのに。

貴方は、消えてしまった。

あぁ、もうダメだわ。

地面に倒れ込むと、瞳を閉じた。

体が停止してしまった。

私もきっと死ぬんだわ。

いえ、私はノーバディだもの、


「…消滅するんだ」

「消えないよ」


冷たい地面から響いた声は、

胸を熱くさせた。


消えた彼は、私を見下ろしていた。



「帰るんだ、」

「…帰る?」


帰る体など、もう無くしたわ。

元の私はもうとっくに死んでる。

私は元をなきしてただの亡骸。

大事なモノを全てもっていってしまった元の体。

あの子には、心をいうものがあったのだろうか…


私を見下ろす彼は優しい顔をしてた。

細まった瞳は、

停止した体を徐々に軽くした。

青く光る瞳は私の中に何かを入れてくれたかのように、

輝き出した。



   


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