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ただいま
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「貴方は、帰るの?元の身体に…帰るの?」

「うん、そうだよ」

「そう…、」

それは、消滅するんじゃないのね。

良かった、

そう想う自分がいた。

「私は、貴方がいなくなって…何も感じられなくなったわ、笑うこともできなくなったわ」

「…NO NAME」

「心なんかないのにね、なんだか辛かった」

「……いや、俺は心があるよ。きっと。だからNO NAMEにもあるはずなんだ」

ゆっくりとしゃがんだ彼は、

私の手に手のひらを重ねた。

「あったかい、」

夕日の温かさを感じた。

彼は、夕日がよく似合っていた。

栗色の髪も夕日に生えていた。



「貴方といると、私は幸せだった――…」


そんな気が、したわ。


「俺もだよ、君は嘘の笑顔だったかもしれない、
でも君の笑顔からは…暖かいモノを感じた。」

「笑顔、から」

覚えてる、

なんとなく元の体のあの子はよく笑っていた。

私はあの子の笑い方を真似ていた。


「…あの子、私に笑顔を残してくれたのね」


何もない私に、

笑顔を残してくれたわ…

ありがとう。


「NO NAME、僕は君と出会えてよかった。」

彼の顔が近づくと、

ゆっくりと唇にふれた柔らかいもの。

「私もよ」

瞳を閉じると、

暗い闇の世界から、手が伸びてきた気がした。





一緒に帰ろう。





優しい彼の声だ、

手を取ると、視界は白い光に包まれた。

残ったのは暖かい感覚。








帰ろう、一緒に、貴方と一緒に。

























おかえり。


懐かしいあの子の声だった。

柔らかいあの子の心に戻ってこれた。

ありがとう、笑顔を、

心を、分けてくれて。









懐かしい感覚に、

瞳を開けた。




「あ、れ」



目の前には彼がいた。

優しく微笑んで、泣いていた。



「やっと帰ってこれたね、待ってたんだ、君がくるのを…でも、迎えに来ちゃったけど」


「…ごめんなさい、遅れて…ごめんなさい」


貴方は待っていたのね、

ここに帰ってくるのを。


私も貴方も消えなかったわ。









帰ってきた、この世界へ。







「心とか、関係ない…これからはずっと一緒にいられるんだ」

「うん、笑っていられる…。」







ただいま、本当の私。


   


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