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いつものように店のお客様のテーブルに料理屋や飲み物を運んでいる途中に男性から声をかけられる。男性は金髪をなびかせた、綺麗な男の人だったけれど。クラウドの方が綺麗だな、とぼんやりと思っていると、いきなり腕を掴まれたので目を丸くした。

「あんた、口説かれてるぞ、と」

その瞬間でその手を振り払うように現れた手、その先に見せたのはレノさんの姿だった。赤い髪が揺れて、目の前の男性は少し顔を曇らせては無言でテーブルに戻っていった。息を吐きだして、どうしてここにレノさんがいるのか、いやまずお礼を言って、聞くことにした。

「ありがとうございます」

「いつかどっかに連れされちまいそうだな、と」

いや、そこまで馬鹿じゃない。と苦笑いを浮かべて、彼が店にいる理由を尋ねたら。いちゃ悪いかと言われた。ごもっとも、だが。レノさんは厄介でたまらない気がする。人の気も知らないでカウンター席についた彼はお酒を頼んで、にやにやとこちらを眺めてくる。やりにくい。

「実はいうと俺、結構前からこの店に来てるぞ、と」

「・・・はい?」

その言葉を嘘だと信じたかったが、嘘ではないらしい。その時から私だということに気づいたいたらしいが、私は別だ。全然気づかなかった。どうしよう。あたふたしていると、クスクスとレノさんが笑い出すもんだから、思わず顔を歪める。

「そんな顔するなよ、と。可愛い顔が台無しだぜ」

「はいはい、そうですね」

「なんだそのまったく動じない反応」

あんたも変わちまったなー、と囁くレノさんに貴方はまったく変わってない。と叫んでやりたい。本当に変わらない、初めて会った頃はまだあの長い後ろの髪はなかったけれど、彼は今と同じ綺麗な赤髪を揺らして、黒いゴーグルをつけていた。エアリスを待っていたとき、教会の扉が開いた音がしたので振り返ってみればエアリスではない黒服の姿に驚いた。彼と目があったとき、慌ててそらそうとしたが、彼はじっと覗き込んでみるから、冷や汗をかいた。あんた可愛いな、と。と彼は言って私の腕をひいたときは、びっくりしたもんだ。そのままどこかに連れて行かれそうになったので、慌てて逃げた記憶がある。ザックスと歩いているときも、彼は声をかけてきたりと、色々な思い出があるもんだ。軽いところは変わってない。

「NO NAME、このあと空いてるか、と」

久しぶりに名前を呼ばれた。だがすかさず、空いてません。と答えて仕事に戻る。そのうち諦めて帰るだろう、思ってグラスを洗いに厨房へ入った。






   

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