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扉を開けば見知った教会の中が見えた。花々たちが咲いていたあの場所は湖になっていて、綺麗な水があった。それに右手を触れさせれば冷たい感覚を感じたのに、なんだかこの水は温かい気がしてならなかった。

この教会には何度も来ていて、昔はエアリスというお姉さんとよく一緒に遊んだ。彼女は優しく接してくれて、彼同様色々なことを教えてくれた。おとぎ話とか星の話とか。懐かしい、星の危機の時に彼女は姿を消してしまってそれ以来会うことはなかったけど、なんとなく彼女はザックスと同じように死んでしまったのだと感じていた。

本当に優しくて、綺麗な人だった。

「!」

上から落ちてきた雫が湖に落ちた瞬間、見えたのはエアリスの姿だった。懐かしい彼女の姿が、見えた気がした。

――まだ、正直に、なれないの?

そんな声がした気がして、なんだかゆらゆらと思いが揺れる。正直になれない、自分にはなんのことか分からなかった。だから、答えもわからない。私は、他人以上に自分のことがわからないのだ。寂しさとなんともいえない思いが溢れ出して、ため息をついた。

そして聞こえた足音に振り向くと、そこには金髪を揺らしたクラウドの姿があって、彼も少し驚いているようだった。

「昨日ぶりだね、」

「ああ、どうして」

どうして、ここへ。と訪ねた彼にどうしてだろう、自分も少し考えた。近くにあった長いイスに座れば、頬を緩める。

「懐かしい場所だから、かな。クラウドは?」

「同じようなものだな」

ふっと笑った彼の淡い笑顔、思わずかっこいい、と思ってしまった。やっぱり美形の男の人は違う。しばらく黙っていたけれど、沈黙が漂う空気は嫌いじゃなかった。彼も同じようだったが、ふとしたように口を開いく

「聞きたいことがあるんだ」

「うん」

首を傾げれば、彼の青い瞳がこちらを見る。ごくり、と息を飲み込んで。ほんとに彼とそっくりな瞳をしていると、再度思った。瞳を揺らがせることなく、彼の唇はゆっくりと動く。

「なぜ、俺を許せるんだ」

以前クラウドに向けた言葉は、生きろ、ということ。それは彼の死についてクラウドを咎めたりはしないということ。でもクラウドにはそれが一番辛いことだと思った。今後のクラウド次第で苦にもなる答えだと思ったけれど、私はあったばかりのクラウドを信じていた。彼が命懸けで守った人は、悪い人なわけじゃない。

「だって、クラウドはなにも悪くないから」

「ザックスが死んだのは、俺の・・・せいだ」

吐き出された言葉が鼓膜を揺らした瞬間に胸の中で溢れていた悲しみが首を絞めたような気がした。

クラウドは何も悪くない、彼がクラウドを守っただけだ。それを苦に感じる必要はどこにもないんだよ、だって、そうでしょう。

「だから、自由に生きて」

「じゃあなんでそんな顔するんだ」

その言葉に息ができなくなる。知りたくなかった答えを言われているようで、瞳の中の孤独が叫びだしてしまいそう。クラウドは眉を寄せて、小さく、それでいて弱く言葉を放つ。

「あんたはずっと泣いているみたいだ」

どんな時も、笑う時が一番、そう感じる。そう言ったクラウドの顔が歪んだ、視界に映ったのは黒髪のザックスの姿。彼は同じように、繰り返す。

――ずっと泣いてるみたいだよ、お前

最初に会った時に言われた言葉だった、それからザックスは私を抱きしめて言ったんだ。笑え、笑えと。そんな過去の記憶がクラウドと重なって、小さな雫が地面に落ちた。




―正直に、なったら?









   

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