2/3 「ああ、今から帰る。分かってる。」 荷物を届け終えたところで、ティファから連絡がくる。予想通りの少し低い声が聞こえたから小さく誤って、すぐに帰ると言う。今日はいつも以上に仕事がたくさんあって、連絡できなかった。明日はマリン達と出かける予定だったから、きっと心配している。小さく息を吸い込んで、バイクのハンドルに力を入れようとした時、先の方で最近知ったばかりの色素の薄い栗色の髪が揺れていた。彼女が見つめる先は、男たちが群がる道だった。まさか、女一人でそこを通るはずないよな。なんて思っていたら、彼女の右足が動いて、そのつま先はその道へ向いていた。自然とバイクを走らせて、彼女の近くで止まると同時に彼女の肩に触れた。 驚いたような瞳が向けられて、しばらくして自分の名前を呼んだ彼女に送っておく、と伝えればやんわりと微笑んで、断られる。しばらく黙っていたら、彼女はまた小さく笑って送っていくことを許したので、後ろに乗せた。あの道のほうが近いと聞いたので、遠回りせずその男達の道を通る。 「どっちだ」 「あ、右っ」 角を曲がっていくたびに、彼女の掴む服に熱がこもっていくような気がした。 「わざわざありがとう」 そしてまたやんわりと微笑んだ笑顔に、なんだかまた虚しくなる。風が髪を揺らすのをぼんやりと眺めては、また小さく息を吐き出した。 ひどい、気分だ。 [しおりを挟む] |